台風27号が接近中です。
しかも大型で強いとか。
つい先週、台風26号の影響で首都圏の交通網は麻痺したばかり。
今度の台風は、土曜日に首都圏に最接近するそうで、通勤には影響しないのが救いと言えば救いです。
ただ、私は日曜日にイベントがあるため出勤の予定。
台風の速度が少し遅れれば、日曜日であっても影響を受ける可能性無しとしません。
うん十万円もかけてポスターやチラシを作成して関係機関にばらまき、準備おさおさ怠りなく進めてきたこともあり、無事に開催したいものです。
古く、私たち日本人は台風なんていう無粋な言葉を使いませんでした。
台風という言葉の意味とはぴったり一致するわけではありませんが、野分と言いましたね。
最も野分というと、雨より強風のイメージが強いですが。
鳥羽殿へ 五六騎急ぐ 野分哉
与謝蕪村の句です。
与謝蕪村と言う人、史実に材を採った句を残しており、これもその一つかと思われます。
鳥羽殿とは、平安期に主に上皇が利用していた鳥羽離宮のことですが、この句では、後白河法皇が平清盛によって幽閉された事件を指しているものと思われます。
京都の自宅で台風に怯えながら、俳人は鳥羽離宮に駆け付けるわずかな騎馬武者を思い描いたのでしょうか。
あるいは騎馬武者を幻視したのでしょうか。
いずれにせよ、不気味な感じが漂います。
写生を旨とする当時の俳諧から言えば邪道といってもよい句ですが、それを堂々と、いくつも作ったところに、与謝蕪村の真骨頂があるものと思います。
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わが国の文学者は古来より野分という現象に神秘的な力を感じていたのか、「源氏物語」の28帖は「野分」と題されていますし、夏目漱石も「野分」という一種の青春小説を残しています。
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ぐっと時代がくだって1980年代、台風の夜、異常な興奮状態に陥る中学生たちを描いた瑞々しい映画「台風クラブ」が公開されました。
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工藤夕貴,大西結花,三浦友和 | |
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これなどは、わが国の人々は長きにわたって育んできた台風=野分に対する美意識を、現代も受け継いでいることを示していますね。
思い起こせば子どもの頃、川が氾濫して水浸しになった町を、ゴムボートで救助される人の映像などを見て、なんだか心が浮かれたような気分になりました。
しかもなぜかゴムボートには必ず大きな犬が乗っていたりして、ますます気分が盛り上がりました。
今思えば不謹慎ですが。
野分というもの、そういう魔が潜んでいるような気がしてなりません。