銀婚式

文学

 昨夜は篠田節子の「銀婚式」という小説を読みました。
 文庫本で380ページほどですが、一気に読みました。

 タイトルからいって、夫婦の25年間の物語を想像すると、肩透かしをくいます。

銀婚式 (新潮文庫)
篠田 節子
新潮社

 これは、地味な男の、普通の物語だといえるでしょう。

 一流大学を出て、証券会社に勤め、ニューヨーク支社で働く高澤。
 しかし、妻は米国生活に慣れず、気鬱に沈み、幼い息子を連れて帰国してしまいます。

 やがて、離婚。

 ほどなくして、証券会社が倒産。

 その後中堅の古い保険会社に再就職しますが、古臭い社風にあわず、リストラされてしまいます。

 つてを頼って仙台のおバカ私立大学で経済学を教える教員になります。
 ここで、おそろしく勉強の出来ない学生たちの指導に悪戦苦闘したり、事務職の若い女との恋愛沙汰があったりします。

 また、大学受験を控えた息子の相談に乗ったり、別れた妻が親の介護に疲れているのを助けたり。
 大学に合格した息子がデキ婚したり。

 何気ないようで、じつは結構たくさんの問題が発生する、普通の人生が、淡々と綴られていきます。

 圧倒的多数の人々は、普通の人生を生きているわけで、そこに、この物語の魅力があるものと思います。

 ラスト、息子の結婚式に出た高澤は、元妻に、「やり直すか」と問います。
 元妻はそれには応えず、「続いていれば、今年が銀婚式なのね」と一人ごちます。

 誠に印象的なラストです。

 元夫婦は再婚するのでしょうか?
 それともそれぞれの人生を一人、歩むのでしょうか?

 どちらであっても、それは結構色々ある、普通の人生になるでしょう。


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