御大、筒井康隆の平成18年の作品「銀齢の果て」を読みました。
私は中高生の頃、ツツイストを自認するほど御大の小説を愛読しましたが、大阪と東京の戦争を描いた「東海道戦争」や、ベトナム戦争の観戦を企画する「ベトナム観光公社」などのブラック・ユーモアあふれる作品から、「虚人たち」や「虚航船団」など、純文学志向の実験的な作風へと変化するにつれ、あまり読まなくなってしまいました。
実験的な作品が増えてからでは、退職した元大学教授の心象風景を描いた「敵」という作品がお気に入りです。
で、今回の「銀齢の果て」、内容は少子高齢化が極端に進んだ近未来、70歳以上の老人同士殺し合いをさせるという相互処刑制度が施行され、ある町で起こる老人たちの殺し合いをユーモラスに、またドタバタ調で描いた作品で、やや先祖がえりした感のある作品です。
しかし、若い頃のような疾走するスピード感、鬼面人を驚かす趣向は感じられず、御大の筆の衰えはいかんともなしがたいところです。
映画「バトル・ロワイヤル」では、中学生同士が国家の命令で殺し合いをさせられていましたが、むしろ老人同士の殺し合いのほうが説得力があり、命の国家管理という、SFでたびたび取り上げられる古典的な内容を持ってもいます。
作中、たびたび描かれる、返り血の熱さ、というのは、新鮮な驚きでしたねぇ。
そしてまた、死と隣り合わせの殺人ほど、性的な愉悦をもたらすものはない、という記述。
そういった反則技のような表現がたびたび出てくるところは、さすがは御大と思わせます。
そうはいっても、ぐいぐいと読ませる力は健在です。
![]() | 銀齢の果て (新潮文庫) |
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