限界国家

文学


 今日は近未来に対する警告の書とも言うべき小説を読みました。
 「限界国家」です。
 限界集落という言葉がありますが、それをもじった、あるいは拡大した概念です。








 老いた財界の大物が少子高齢化が進み、伝統的な日本の文化が失われつつあることを憂い、あるコンサルティング会社に20~30年後の日本社会がどうなっているかを報告書にして提出してほしい、と依頼するところから物語は始まります。

 その後は延々とコンサルティング会社の上司部下、最先端のベンチャー企業社長にして現役の大学生でもある男らとのスリリングな会話が続きます。
 地の文が少なく、会話が多いのが特徴です。
 ベンチャー企業の若き社長はネット社会には国境という概念は存在せず、守るべき国家も伝統も無いと断言します。

 圧巻なのは、財界の大物の老人とベンチャー企業の社長が直接対話する場面です。
 日本の行く末を案じる老人に、こんな社会にしたのは1世代、2世代前の老人たちで、それ若者にたてなおしてくれと言われても困ると応えるベンチャー企業社長。

 現代は先を読めない者にとっては悲劇、先が読める者にとっては喜劇、というフレーズが心に残ります。

 56歳の私の考えはベンチャー企業の社長よりも老いた財界の大物に近いでしょう。
 財界の重鎮とくらべて辛いのは、今後ますます進化していく情報機器のなかで、必死について行って、実務をこなさなければならない点です。
 生涯兵隊の私に課された過酷な任務です。
 ついて行くのは困難を極めるでしょう。
 職場にいる20代の若手職員と比較してもあまりにも手が遅いし、勘も鈍いです。

 私が34年かけて築き上げてきた職場での信頼も、情報革命にかかっては風前の灯です。
 初老の何もできなくなったサラリーマンには心臓に悪い小説でした。

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