陰影

文学

 一週間ほど前に浴室の電球が切れてしまったことは、このブログで報告したところです。
 翌日には新しい電球を購入して付け替えたのですが、何度スイッチを押しても、一向に電球がつきません。
 で、今日照明器具の業者を呼んで修理してもらいました。
 問題は電球にあったのではなく、電球をはめ込む大元の機械が経年劣化により壊れていたことが判明。
 付け替えてもらって、無事解決。
 32,000円也。
 このところ経年劣化による不具合が生じることが多くなって、その都度、小銭が消えていきます。
 年月が経つということは怖ろしいものです。

 一週間ほど、脱衣所の照明だけを頼りに入浴していました。
 薄ぼんやりした灯りで、嫌なものかと思っていましたが、意外と趣があります。
 薄暗いがゆえに、すべての物がぼんやりして、変な話ですが、幻想的な感じがしました。

 谷崎潤一郎の随筆に、「陰影礼賛」という佳品があります

 要するにびかっと明るい電灯よりも、蝋燭などの昔の灯りのほうが、ぼんやりとして、世界が美しく見える、みたいな内容だったと思います。
 中学生の頃読んだので、内容はあまり覚えていませんが。
 
 薄暗い風呂場で入浴していて、「陰影礼賛」が思い浮かびました。
 昔の人は夜をこんな風に過ごしていたのかと思うと、感慨深いものがあります。

 しかしそうは言っても、今日の工事で明るい浴室がよみがえり、やっぱりこっちの方が良いかと思いました。
 どこまでも現代文明に毒されている、無粋な私がここにいて、陰影を礼賛することなど出来ないと気付かされました。