難民キャンプのメンタル・ヘルス

精神障害

 シリアの内戦に伴う難民キャンプで、子どもの精神状態が危機的状況に追い込まれているようです。
 国連人道問題調整室の調査によれば、トルコ領内にある難民キャンプでは、子どもの半数がうつ状態にあり、三分の一がPTSDの状態にあるそうです。

 これは容易に想像がつきます。
 目の前で親や友人が殺され、自分も命の危険にさらされながら、命からがら逃げ込んだわけですから。
 当然、突如押し寄せた大量の難民に十分な物資が行きわたるはずもなく、窮乏生活を強いられ、明日をも知れぬ身であれば、精神を安定させるほうが困難になるでしょう。

 戦争と精神障害の研究は第一次大戦の頃から始まったようですが、それが特に注目されるようになったのはベトナム戦争がきっかけでしょうね。

 それにしても昔、戦国時代などを生きた下級武士や地侍などは、どうやって精神の安定を保ったのでしょうね。
 あまり時代劇などで戦争の悲惨さゆえに精神をおかしくするという武士は登場しません。
 しかし、昔の戦争は今と違って基本的に白兵戦であり、目の前にいる敵を刺したり切ったりして行うわけですから、返り血は浴びるは、敵の苦悶の表情を間近に見るは、それはそれは精神に悪影響を与えたものと想像します。

 湾岸戦争以降、敵の顔が見えないテレビゲームのような感覚になってしまい、殺し合うということが如何なる事態であるか、よく分からなくなってしまったように思います。

 大量の難民一人一人のメンタル・ケアを行うことは事実上不可能でしょう。
 医師も薬も絶対的に不足しているでしょうから。
 何より環境がメンタルの健康を保てるような状況にありません。

 難民キャンプの人々や内戦中のシリアの人々を思う時、私は彼らに救いの手を差し伸べるどころか、平和な日本に住み、定期的に精神科医にかかりながら、おのれ一人救えないふがいなさに、ただ深いため息をつくのです。


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