霜降(そうこう)

文学

 そういえば昨日は霜降(そうこう)だったのですね。

 二十四節季の18番目、そろそろ霜が降りるころ、です。
 牛肉の肉質のことではありません。

 でも昨日はなんだか蒸し暑かったし、今日もそう冷えるというほどではありません。
 初霜にはまだ三週間ばかり早いように思います。

 明治の俳壇で、高浜虚子は守旧派のレッテルを張られました。
 それに対して彼は、自分が守旧派だというのは他人が言っているのではなく、俳句の伝統美を守るため、自ら守旧と言っているので、それはむしろ褒め言葉だ、とへそ曲がりなことを言っています。

 その高浜虚子に、霜降を詠んであまりにストレートな句があります。

 霜降れば 霜を楯とす 法(のり)の城

 霜が降ったなら霜を、花が咲いたなら花を感得して仏法を学ぶよすがにしようという、説教くさい句です。
 私はあまりこの句を好みませんが、霜降をここまで素直に詠んだ句も歌も知りません。
 そういうわけで、この時季にふさわしかろうと思ったわけです。

 さて、彼の兄貴分である正岡子規は、また守旧とは異なった味わいの、秋の句とも冬の句とも見える面白いものを詠んでいます。

 
菊の香や 月夜ながらに 冬に入る

 菊と月は秋の季語、冬はそのまま冬の季語、いわゆる季重ねのひどいやつですね。

 普通季重ねというと、二つでしょうが、これは季語が三つですからねぇ。

 素人がやったら俳諧の師匠に怒られちゃうでしょうねぇ。

 それを平然とやってのけるのが、正岡子規の天才肌というか、ひねくれ者というか、ネーム・バリューというか、いずれにしろまともな句ではありません。

 しかし私は、霜降をストレートに詠んだ高浜虚子の句より、季重ねを三つもやった正岡子規の句を良しとします。

 だって面白いではないですか。

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