食うため

仕事

 大金が欲しいのは誰もが同じでしょうが、精神障害を発症して以来、生涯遊んで暮らせるだけの大金が欲しいという欲求が、日増しに高まっています。

 8時間労働の達成は、かつて全労働者の悲願でした。

 労働組合などの激しい運動の結果、今、私の労働時間は1日7時間45分にまでにいたりました。

 それは人類がたどり着いた叡智というべきで、私は先人の努力によって、今のような待遇を受けられているわけです。

 それは誠に喜ばしいことですが、どこまでも貪欲な私は、働かずに食っていける境遇を想像せずにはいられません。

 例えば夏目漱石が描いた「それから」先生
 金持ちの次男坊が、高等教育を終えながら仕事をせず、書生まで置いて人妻との不倫などを楽しんでいます。

 この作品によって、当時、高等遊民という言葉が流行りましたね。

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 松田優作藤谷美和子を迎えて森田芳光監督が映画化し、その静かなせりふ回しが印象的な、佳作でした。

 また、亡くなった作曲家の父親の印税で暮らし、女遊びに明け暮れている中年男を描いて優れた味わい深いコメディとなったヒュー・グラント主演の「アバウト・ア・ボーイ」

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 そのような遊び人の生活を謳歌できるのはごくわずかな恵まれた人だけだし、私はそういう境遇に無いことはよく分かっています。

 だからこそ、日々、ほとんど時間の浪費としか思えないくだらぬ仕事に精を出し、涙金程度の月給を得る生活を、22年も続けているのです。

 22年間も、平日は朝から晩までつまらぬ仕事に追われる生活を続けながら、私は今も仕事の何たるかを知らず、相も変わらず限られた人生の貴重な時間を、食うために無駄に浪費しているように思えてなりません。

 それを言ったら、ほとんどすべての人々が、生きるために根源的な疑問を問うこともなく、日々の仕事をこなしていることは重々承知しているつもりです。

 しかし、私はこの世でたった独りの掛け替えのない存在で、他人と比較すること自体馬鹿げています。

 したがって、他の多くの人がつまらぬ仕事で時間を浪費していることをもって、お前も同じように我慢しろということは、私という存在の掛け替えのなさを考えれば、お門違いというものです。

 私が夢想するのは、LOTO7でも、ジャンボ宝くじでも、なんでも良いですから、偶然に大金を得て、仕事などというつまらぬものから解放され、全ての時間をおのれ独りのために使う贅沢な生活です。

 でもそんな僥倖が起こるはずもありません。
 私は少なくとも定年までの17年間、社会の変化によっては生きるために65歳まで、時間の浪費を続けるのでしょうね。

 昔から、食うために生きるのか、生きるために食うのか、という根源的な疑問を端的に現す言葉がありますね。
 少なくとも今の私は、食うために生きているとしか言いようがありません。
 食うために生きることを良しとするか否かは、おそらく人類永遠の課題だと思います。

 私としては、どういう方法でか、食うために働くという死ぬほどつまらぬ生活から逃れる僥倖が訪れることを、願ってやみません。

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