食人族

映画

 DVDで「食人族」を観ました。1983年公開の、古い映画です。当時私は中学生で、さして興味を持ちませんでした。最近、ドキュメンタリー風に描かれていると聞いて、にわかに興味を持ち、観てみました。
 ドキュメンタリー風に描かれたノンフィクションで、後の「ヴレア・ウィッチ・プロジェクト」などに通ずる先駆けとなった作品と思われます。

 内容は、アマゾンの奥地に存在するという食人の習慣をもった部族に接触しようとしたアメリカの取材班が、その部族に攻撃的な態度をとったため、逆に虐殺されてしまう、というものです。

 人といわず、獣といわず、残虐な虐殺シーンがこれでもか、というほどしつこく描かれる、下品な映画です。

 しかし、それは果たして下品なのでしょうか。

 私たちは、日々、誰かが殺した豚や牛や鳥や魚を食べています。ただ、殺す場面に接していないというだけです。

 そしてまた、人類の歴史は戦いと虐殺を繰り返すものでした。

 我がくにびとは、戦の戦利品として、人の首を切り落とす、首狩族でもありました。
 それを考えれば、アマゾンの奥地にそんな部族がいようと、責めることはできますまい。鯨やイルカを食うことも、犬を食うことも、猿を食うことも、牛を食うことと何の違いもありますまい。

 現代社会においても、世界各地で戦争や虐殺が行われています。人間にはそういう面があるということを、よく弁えねばなりません。平和が大事と、いくら叫んでみたところで、人間の本性は平和を求めていません。おそらく平和の実現には、戦うよりも戦わないほうが得だ、という冷静な判断と、殺し合いに対する恐怖が必要でしょう。

 下品な映画だからこそ、人間の獣性を思い知らされる、重い内容を持っていました。

食人族 [DVD]
フランチェスカ・チアルディ,ルカ・ベルバレスキ,ロバート・カーマン,ペリー・ピルカネン
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