今日は格別寒かったですね。
いったい、日本家屋は夏をしのぎやすいように出来ているので、冬はかなりしんどいです。
私が現在住まいする千葉市のマンションは鉄筋鉄骨コンクリート造りの上、リビングが南を向いているため、日中は暖房を必要としません。
しかし、私が25歳まで過ごした実家は規模こそ大きかったものの、木造で、ずいぶん寒かったように思います。
西行法師の冬の歌を二首。
年暮れし そのいとなみは 忘られて あらぬ様なる いそぎをぞする
年が暮れた、その時の恒例の行事は忘れてしまって、出家した今は昔と異なるさまの正月の準備をするのだ、というほどの意かと思います。
じつは仏道修行にはあまり熱心ではなかった西行法師。
それでも仏門に帰依したときには殊勝な心がけだったようです。
おかしいですね。
さびしさに 堪(た)へたる人の またもあれな 庵ならべむ 冬の山里
こちらは西行法師らしいですねぇ。
寂しさに耐えている人が私のほかにもいればよいな、庵を並べて住もう、冬の山里で、といったほどの意かと思われます。
西行法師、山中で寂しさのあまり死体をかき集めて人造人間を作り出した、という伝説が残っているほどの寂しがり。
なんでそんな寂しがりが山中に庵を結んで仏道修行に励もうなんて思っちゃったんでしょうねぇ。
でもなんとなく分かるような気がします。
私も極端な怖がりで寂しがりですが、時折ふと、すべてを捨てて乞食坊主となり、物欲から解放されてみたいと思うことがあるからです。
でも今日食う物にも困るような暮らしは、やれないでしょうねぇ。
現代日本の世捨て人というのは、都会の高級マンションで、食うに困らない金づるを持ち、日々芸術鑑賞や思索で暮らす人のことを言うんじゃないでしょうか。
都会の人ごみは、身を隠すには絶好ですし。
できることなら私も、都心の高級マンションに居を構え、日々都内散歩を楽しんでは思索に耽り、展覧会や芝居、コンサートなどの芸事に心酔したいものです。
でも今の私には、毎日ちまちまと働き、夜は好きなホラー映画を観るくらいが関の山なのです。
夏目漱石が「それから」で描き出した、高等遊民になってみたいものです。
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