黒子

文学

  予報では今日から土曜日まで雨ということでしたが、千葉は今日は曇りですね。
 湿気が異常に高いのが、台風の接近を予感させます。
 ピークは土曜日だとか。
 マンションに籠って過ごすことになりそうです。
 しかしまた、それもよし。
 変に秋晴れだったりすると、何か外出しなければいけないかのようなプレッシャーに襲われます。
 台風を理由に、堂々と家でだらだらしているのは、それはそれで気持ちの良いものです。

 台風の 過ぎて黒子の 一つ増え 
田辺レイ

 面白い句ですね。
 台風の間に、ストレスでほくろが増えちゃったんでしょうか。
 しかし、たかがほくろ。
 そこに生活の小さな悲しみを見るのは、大げさに過ぎるでしょうか。

 田辺レイは昭和10年生まれと言いますから、現在76歳でしょうか。
 「鱧の皮」という句集を偶然手にして、なかなか面白く感じました。
 
 他に、

  
秋暑し シルバーシートに 細く坐し

   
雑炊の 喋り過ぎたる 舌を焼き

といった句が目につきます。

 いずれも生活上のそこはかとない悲しみを感じます。

 古今和歌集仮名序によれば、人の心を種にして、万の言の葉より生まれける、のが和歌。
 俳句も同じでしょう。
 種が人の心なら、喜びも悲しみも怒りも、すべてが詩歌の題材。
 美しいか否か、にこだわるのはむしろ野暮。

  今接近中の台風が現実にどんな悪さをするのか、また、私のたましいにどんな影響を与えるのか、楽しみなような、怖いような。

鱧の皮―田辺レイ句集
田辺 レイ
ふらんす堂
新版 古今和歌集 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)
高田 祐彦
角川学芸出版

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