1年は短いか?

思想・学問

 最近お気に入りの、「チコちゃんに叱られる」という番組で、大人になるとなぜ1年が短く感じられるのか、ということが話題になっていました。

NHK  『チコちゃんに叱られる』  チコちゃん パスケース
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 子供の頃は、毎日新たな発見や疑問があり、楽しいことも多く、ときめきながら生きているため、1年が長く感じられるそうです。
 年とともにときめきは薄れ、早くも19歳くらいから、時間の流れが速いと感じるようになるそうです。

 大人は惰性で毎日の繰り返しを生きている、ということでしょうか?

 しかし、私は1年があっという間に過ぎる、という、よく聞く言説が理解できません。
 1年どころか、一か月だって、地獄のように長く感じる、というのが私の偽らざる実感です。

 ときめきなんて言うものがあるわけではありません。
 惰性の繰り返しだからこそ、長く感じるのだと思います。

 1年前なんてはるか大昔だし、1年後は遠い未来です。

 もちろん、過ぎてしまえばあっという間、というのは理解できなくもありませんが、今を生きる私たちは、常に過ぎ行く月日を生きているのであって、過ぎてしまった過去を生きているわけではなく、過去は後悔の対象だったり、甘美な思い出だったりはするものの、もはや過去を生きることはできません。

 だからこそ、タイム・トラベルを扱ったSF作品が数多く作られるのでしょう。
 絶対に不可能なことだからこそ。

 未来に向かって生きることは、とりもなおさず死が近づいているということでもあります。
 最後は必ず死ぬのであり、未来は絶望的です。

 それでも、生物は生きなければなりません。
 生まれてしまったものは、生きるほかありません。

 そんな貴重な時間を、やれあっという間だの、1年が短いだのと、嘆いている場合ではありません。

 地獄のような生を全うすることを、私たちは義務付けられているのですから。