今日は珍しく、戦争映画を観ました。
実話を基にしたという触れ込みの、グルジアとロシアが5日間だけ戦った地域紛争を取材する戦場ジャーナリストやカメラマンの物語です。
題して、「5デイズ」。
北京オリンピックの開会式と時を同じくして、オセチア地方を巡るロシアとグルジアとが開戦に到ります。
北京オリンピックのニュースで持ちきりのため、彼らの決死の取材は全くどのテレビ局からも取り上げてもらえません。
それでもジャーナリストとして真実を伝えたい、と市街戦や空爆の様子を撮影し続けます。
実は主人公のジャーナリスト、イラクで取材中、恋人をイラク軍からの攻撃で失っています。
彼を捉えたロシア軍の将校は、その目を覗き込み、家族を戦争で失った者が持つ虚無を湛えている、と指摘し、自分もアフガニスタンに従軍した際、息子を亡くしたからその気持ちはよく分かる、と言い出します。
そして虚無は喧騒を求め、最も過激な喧騒である戦場を求めて、自分は軍人として、お前は戦場ジャーナリストとして戦場を駆け巡っているのだ、と泣き落としにかかります。
そのロシア将校が求めているのは、ロシア軍による住民虐殺を撮影した記録が残るSDカード。
しかし本物のSDカードは逃走中密かに埋め、戦場近くの病院の惨状を撮影したSDカードを差し出します。
激怒するロシア将校。
そこに、グルジアの強襲部隊が現われ、米国人ジャーナリストは九死に一生を得て、なおも住民虐殺を記録したカードを取り戻し、これをインターネット上に流そうと苦心惨憺するのです。
私はこの映画を観て、非常な違和感を覚えました。
映画では、グルジアは自由を求めてEU参加を目指してロシアと対立し、米国やEUなどからの援軍をひたすら待つ可哀相な人々として描かれています。
しかし一説には、グルジアが支配していたオセチア地方に住むオセチア人を大量虐殺したのはグルジア軍だとも言われており、また、最初に攻撃を仕掛けたのはグルジア軍とする説もあります。
わずか5年ほど前のことですから、闇に葬られた真実は、まだ闇のままです。
ロシア軍が圧倒的軍事力でこの戦いに勝利したわけですが、全面戦争というよりは地域紛争ですね。
領土を巡る隣国同士の争いに、正義もくそもありません。
どちらの言い分も半分くらい正しく、半分くらい誤りだと考えるのが常識的でしょう。
実話に基づくというだけあってなかなか迫力がありますが、自由主義の米国をバックにするグルジア=正義、領土が欲しいだけのロシア=悪、みたいな単純な図式化は、米国人が陥りがちな、もっとも危険な思想であり、誤りだと思います。
欧州で製作されたなら、複雑な歴史を持つゆえ、もう少し多面的な見方ができたであろうと、残念でなりません。
戦争を描く際、どちらかに加担していたのでは、単なる宣伝になってしまいますよ。
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