エジプトと中国

社会・政治

 ここ数週間エジプトで続いたデモは、死傷者を出しながらもムバラク大統領の辞任という形で一区切りつきましたね。
 頑固学の博士とまで言われたムバラク氏ですが、引き際は心得ていたようです。
 その点、ルーマニアで処刑されたチャウシェスク大統領より大分冷静でしたね。
 これからエジプトでどういう政権が生まれるのか、あるいは混乱が続くのか予断を許さない状況ですが、その行方を最も注視しているのはイスラエルでしょう。
 もしイスラム原理主義政権が成立すれば、中東の不安定化は避けられず、イスラエルは孤立を深めることになりましょう。

 面白いのは、中東から遠く離れた中国で、エジプトのデモとそれに伴う大統領辞任について報道を規制しているらしいことです。
 恐らくはあの映像から天安門事件が想起され、当時の怨念を胸に秘めた人々や、貧富の格差解消と言論の自由を求める人々が結託してデモもしくは暴動を起こした場合、容易に抑え込むことができないと中国政府は感じているのでしょう。
 天安門事件当時は携帯電話もフェイスブックもツイッターもありませんでした。
 テレビカメラを排除すれば情報統制は可能だったわけです。
 しかし今、インターネット社会。
 政府がいくら頑張っても情報は素早く全世界に広がり、戦車を出せばそのことがデモを暴徒化させる原因になるでしょう。

 つまり中国政府は強気なようでいて、じつはかなり臆病。
 体制はきっかけさえあれば簡単に崩壊することを熟知しているようです。
 それはそうでしょう。
 かつて共産党が国民党を追い出し、その後は文化大革命の名のもとに多くの同胞を虐殺したり吊るしあげたり。
 自分たちの先輩諸氏が目の前で繰り広げたことです。
 その矛先が自分たちに向かうことを考えたら、政府要人は夜も眠れないことでしょう。

 もっと怖れなさい。恐怖を感じなさい。
 その恐怖が、自国に言論の自由や民主主義をもたらすことでしょう。
 民衆が動き出してからでは遅いのですよ。

 

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