最近TPPへの参加をどうするか、ということが話題になっていますね。
経済界は参加を自明のこととし、農家や農協は絶対反対。
この利害の調整をうまく行えるのか、菅内閣の動きは注目すべきところです。
もう10年以上前から、グローバル化ということが叫ばれていますね。
世界は境界を失い、ひたすら巨大な利益を求めてどこへでも行く。
かつての帝国主義列強によってブロック化された植民地時代には、植民地に消費を担わせ、富を搾取すれば済むことでした。
しかし今、消費者は世界中のあらゆる人々。
グローバル企業は世界中の人間の物欲をかきたて、欲望にそうような商品を作り、過剰な広告を打って売り込む。
売ったならばただちにさらに高性能な製品や安価な製品を開発して再び消費者の所有欲求をかきたて、またまた売りこむ。
利益を得た企業や株主は生涯かかっても使いきれないほどの富を蓄えながら、もっともっとと、多額の利益を追求する。
際限のない物欲地獄がグローバル化の正体なのでしょうか。
立って半畳寝て一畳。
物欲を燃えたぎらせたとて、たかが知れているというものです。
現に近頃の若者はあまり物を欲しがらないと聞きました。
車だとか、大型テレビだとか、恋人さえも。
しかし、個人が物欲を抑え込むと、消費は冷え込み、景気が悪化し、雇用のミスマッチが生じるのも事実です。
国家としての行動は、物欲地獄がグローバル社会の本態であると知って、あえて地獄のルールにのっとって、競争に参加しなければなりますまい。
そうでなければ国は衰退し、衰退すれば国民は物質的豊かさを享受できず、幸福感を感じられなくなり、要するに不幸な国家になってしまうでしょう。
グローバル社会=物欲地獄はもはや現出してしまいました。
しかもこの地獄を作るために、わが国は大きな貢献をしてきました。
米国の自動車産業を敵にまわして米国民の物欲をかきたて、ついに世界一の自動車産業を作り上げ、グローバル企業が出来上がりました。
それは繊維産業にせよ家電にせよコンピュータにせよ同じこと。
地獄に住まう私たちは、ここを極楽に変えることはできますまい。
それなら腹をくくってTPPに参加し、どこまでも貪欲に、利益を追求する他ないでしょう。
地獄の倣いによって、競争力がない産業は滅んでいくでしょう。
しかし日本の農産物はおいしくて安全という良いイメージがあります。
このブランド力を生かして、戦いの荒野へと踏み出す以外に生き残る道はありはしないでしょう。
![]() | グローバリゼーション―人間への影響 (サピエンティア) |
Zygmunt Bauman,澤田 眞治,中井 愛子 | |
法政大学出版局 |



