中国の某新聞に、大災害の混乱にあって、秩序立った行動を維持している日本人に、多くの中国人は敬服している、とあったそうです。
また、阪神淡路大震災の際、ワシントン駐在の日本人記者がテレビ番組にゲスト出演し、なぜ日本人は暴動や略奪を起こさないのか、と聞かれ、返答に窮したとか。
新渡戸稲造は、米国人から日本では宗教教育が行われていないそうだが、宗教教育なしでどうやって道徳を教えるのか、と問われ、英文で「武士道」を著しました。
武士に限らず、日本人の多くに、武士道的なものが染み付いているようで、それが秩序維持に役立っているのではないかと私は考えます。
どうやら多くの国々で、災害の混乱時にあっては暴動や略奪が起きるのが当然と思われているようです。
支援物資を運んできたトラックに列を作らず殺到し、やむを得ずトラックが徐行しながら支援物資を投げている映像を見たことがあります。
列を作れば安全確実に物資を手に入れることができるし、物資がなくなってしまったら、次のトラックを待てばよいこと。
ただでさえ混乱して殺気立っている状況を、自らの行動でよけい混乱させるなど愚の骨頂。
私たち日本人から言わせれば、なぜ暴動や略奪をするのですか、と聞きたいところです。
今回の災害は、多くの災害がそうであるように、時間がたつほどその悲惨さが判明してきています。
被災地の映像を見るにつけ、一体どこから復旧の手をつければよいのか、呆然とするのみ、というのが多くの人の感想ではないでしょうか。
しかしそうはいっても、地道に少しずつ行動を起こすよりほか手はありますまい。
私の自宅も職場も大した被害はありませんでしたが、それでも書庫を元の状態に戻すのは簡単ではありません。
私たち日本人は地震や津波、さらには戦災など、多くの困難を乗り越えてきました。
今また怖ろしい災害にみまわれたわけですが、起きてしまったことは変えられません。
地道な努力を積み重ねる他に方法はありません。
そしてそれは、わが国民性を考えれば、得意分野と言えるでしょう。
![]() | 武士道 (岩波文庫) |
矢内原 忠雄 | |
岩波書店 |