カンヌ国際映画祭事務局の言論弾圧

思想・学問

 カンヌ国際映画祭で、デンマーク人の映画監督が、「ヒトラーを理解している。幾分共感も覚える」と言ったことが問題視され、カンヌ国際映画祭事務局は、監督を追放する方針を固めたそうですね。

 いやな感じですねぇ。

 言論の自由や表現の自由を守るべき伝統あるカンヌ映画祭で、国際社会で悪人とされている人物に同情的な発言をしたからって、追放なんてねぇ。
 
 ロマン・ポランスキー監督なんか、米国で少女強姦の罪により懲役50年以上の有罪判決を受けていたのに欧州に逃亡し、逃げ回っている最中に「戦場のピアニスト」でカンヌ国際映画祭はパルムドールを与えたというのに。
 
 悪人と言えど、人間。
 むしろその悪人の精神に思いをいたし、なぜドイツ国民が彼を熱狂的に支持したか、冷静な目で見ることが求められています。

 チンギス・ハーンだってナポレオンだってスターリンだって織田信長だって、大量虐殺者にして政治指導者。
 
 国家社会主義(ナチズム)は今でこそ廃れていますが、ヒトラーの時代はむしろ一般的な思想。
 わが大日本帝国も、大正デモクラシーで花開いた民主的な社会は、その後の軍人の政治進出によって、実質的に天皇制国家社会主義とでもいうべき様相を呈しました。
 
 個人の自由より全体の利益を重視するという思想は、現在の民主主義国家においても、公共の福祉のためには個人の権利が制限されることがある、という前提をとっており、それほどおかしなものではありません。

 ユダヤ人を絶滅させようとしたことが特に問題視されますが、高等教育を受けた者はすべて殺害する、としたポル・ポトとか、イスラム教徒を殲滅しようとした十字軍とか、敵対勢力を絶滅させようとするのはよくあること。
 第二次大戦末期、米国民の3割近くが、日本人の完全な絶滅を願っていたという調査もあります。

 そもそもナチス・ドイツは国民の支持を背景に選挙で政権を奪取し、正しい手続きで全権委任法を成立させ、法的にヒトラーに独裁させるという、民主主義のルールに則って生まれた独裁国家です。
 第一次大戦の結果生まれたワイマール憲法という極めて民主的な憲法が、極端な独裁国家を生んだというのは、まことに皮肉なことです。

 歴史上の極悪非道な独裁者は、見方を変えれば英雄ということになります。

 芸術のお祭りであるカンヌ国際映画祭で自らの考えを述べただけで追放なんて、それこそナチが行った言論弾圧と変わらないではありませんか。

 自由民主主義の素晴らしいところは、自由民主主義を否定する主張をも許容する寛容さにあると思うのですけどねぇ。
 

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