現在、専業主婦(夫)については、保険料を払わなくても年金が受け取れる第3号被保険者として扱われています。
第1号が自営業、第2号が勤め人で、いずれもそれぞれ国民年金・厚生年金・共済組合に保険料を納め、それが将来の年金受給を担保しているわけです。
しかるに、第3号は、どうしてだか保険料を全くおさめず、年金がもらえるわけで、これはつまり1号と2号が納めた分を横取りしているように感じます。
専業主婦(夫)が行う家事労働や子育てが巡り巡って社会貢献につながっていることは言うまでもありません。
しかし共働きできちんと保険料を納付し、なおかつ子育てをし、家事労働をしている人は数多く、また、シングル・マザーとか、生涯独身とかの人も、保険料を納めたことによって老後の年金を得ています。
どういうライフ・スタイルをとるかは個人の自由ですが、このような年金制度は専業主婦(夫)であることを推奨しているようなもので、頭の良い女性なら、現代社会は専業主婦におさまって3号に認定されるぎりぎりの金額までパートなどで稼ぐのが金銭的、時間的にもっとも得だと気づくでしょう。
これから少子高齢化が進み、労働人口が減少していく時代にあって、世の中のからくりを知りつくして専業主婦(夫)におさまるような人は、きっと有能な人材であろうと思われます。
それらの有能な人々に広く働いてもらうためには、専業主婦(夫)とは要するに無職であって、他の失業している者と同様に扱い、労働意欲を高める必要があるでしょう。
そういう意味では、無職の独身女性である通称家事手伝いは、社会からまったく優遇されていません。
もともと日本社会は伝統的に共働きでした。
日本人の大多数は百姓だったわけで、農作業は妻も子も行います。
武家や公家、皇族などの奥様は、特別な身分の少数者であり、しかも特別であるがゆえに、百姓の嫁とは違い、たいそう面倒なつきあいやしきたりを守らなければならず、現在の専業主婦(夫)のような三食昼寝付きのお気楽な身分ではありません。
大正時代ころから勤め人の奥さんは働かずに主婦業に精を出すのが一般的になりましたが、その頃はまだ勤め人とは一種のエリートでした。
現在、洗濯には洗濯機や乾燥機があり、掃除には掃除機があり、炊事にしても様々な調理済みの食品や冷凍食品があり、デリバリーや外食産業も盛んです。
昔と比較し、家事労働は飛躍的に容易になっています。
子どもが10人もいて、お城のような広い家に住み、昔ながらの方法でしか家事ができず、しかも家政婦がいないとなれば、専業主婦(夫)には重要な役割があると思いますが、現在の専業主婦(夫)は時間を持て余しているのではないでしょうか。
私は精神病で長期に渡って休んだ時、医師から家事をこなすことが早期回復につながると言われ、家じゅうぴかぴかに掃除したり、凝った料理を作ったりしましたが、職場で働くことを思えば、極楽のようなものでした。
高度成長期にいたって、大企業のOLになって20代半ばくらいに結婚し、専業主婦になる、というモデルケースが急増しましたが、それもわずか50年くらいで破綻し、今後は給料が上がらず、そもそも共働きでなければ通常の生活を維持できなくなるでしょう。
そういう意味で、民主党の年金改革に期待しましたが、ふたを開けてみれば、3号被保険者は廃止するものの、夫が収めた保険料の半分は妻が納めたことと見なして専業主婦(夫)に年金を支給するというのですから、開いた口がふさがりません。
すると例えば、夫が定年すると、夫がせっせと収め続けた保険料の半分をかすめ取った上、後は用無しとばかり夫を捨てて離婚してしまうケースが急増するんじゃないでしょうかねぇ。
専業主婦(夫)は完全な無業者として扱うという劇薬こそが、今後の少子高齢化に耐える制度であろうと考えます。
もちろん、その場合、格安の保育所を多数設置するなどの、共働きあるいはシングル・マザー、シングル・ファザー支援が大前提になることは論を待ちません。
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