今月はじめ、国家公務員等の給与を0.23%減額せよという人事院勧告が政府によって無視され、7~8%立法によって給与を減額することがほぼ決まりました。
労働権に制限を受ける公務員には、その代替措置として人事院が置かれ、戦後の混乱期を除き、人事院勧告ほぼ完全実施されていました。
高度成長期には民間会社の給料が右肩上がりだったため、人事院は毎年10%ちかく給与を増額せよという勧告を出してきました。
しかしバブルが崩壊して数年たつと、初めて減額の人事院勧告が出されるようになりました。
当然、官民格差が生じないようにするためです。
しかも行政改革の旗を掲げ、それこそ怖ろしい勢いで職員数が削減されていきました。
そのうち役所には誰もいなくなっちゃうんじゃないの?という冗談が、本当らしく聞こえてきたほどです。
一人への業務負担が過重となり、体を壊す人、精神を病む人、ひどい場合には自殺する人などが頻発するようになりました。
それでも給与減額と定員削減の波は止まず、次第に職員たちのモチベーションは下がり、モラルの低下が見られるようになりました。
給与が減って仕事が増えるのですから、人情としてやってられない、と思うのは当然です。
昭和48年5月、全農林最高裁判決における公務員の労働基本権制約の根拠というのが示されました。
公務員は労働基本権に対する制限の代償として、制度上整備された生存権擁護のための関連措置による保障を受けている。(法定された勤務条件の享有、人事院勧告制度、人事院に対する行政措置要求及び審査請求)
これにより、政府が人事院勧告を無視することは憲法違反の疑いがある、と多くの法律家が考えるようになりました。
そして、今年の人事院勧告無視。
民主党と連合が主導したと言われていますね。
民主党は政治主導で公務員の給料を減らしたと言う実績を作りたい。
連合は例え今年公務員の給与が大幅に減額されてでも、将来は国家公務員にスト権を含めた労働三権を付与したい、という思惑のようです。
要するに、人事院廃止と、労働権の付与をセットにして実現するためには、一年くらい人事院勧告よりはるかに大幅な給与減額を受けても、将来労働争議などを繰り広げればすぐに元は取れる、ということのようです。
いやですねぇ。
全体の奉仕者たる公務員が、おのれの生活を守るために仕事をおっぽり出してデモやストをやるなんてねぇ。
公共サーヴィスがそんなことで停滞しては、公務員のみならず、国民全体にモラルの低下が広がるような気がします。
私は公務という仕事の特殊性に鑑みて、労働権を制約し、代替措置として人事院を置くという今の制度は、合理的だし優れていると考えています。
それだけに、野田政権の人事院勧告無視は残念でなりません。
![]() | 公務員労働基本権の再構築 |
渡辺 賢 | |
北海道大学出版会 |
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