木枯らし

文学

 関東の冬といえば木枯らし。

 今日も冷たい北風が吹いています。
 この風さえなければ、関東の冬は温暖で、長い秋と言ってもよいくらいでしょう。
 しかしこの北風が、関東の冬を厳しく彩っています。

木枯らしに  吹き合すめる  笛の音を  引き止むべき  言の葉ぞなき

 「源氏物語」第2帖、「帚木」に見られる和歌です。

 思いがけない
男性から、木枯らしに合わせて笛の音と優しい声色で口説かれ、思わず「寂しく1人でいる私には、貴方にずっと側にいて欲しいだなんて、言いたくても言えません」という内容を彼女が浮気心で詠んだ和歌です。

 「帚木」といえば、有名な雨夜の品定めが行われる帖ですね。

 大の男が、しかも高位高官が雨の夜に寄ってたかってこういう女は良いの悪いのと、おふざけがすぎますねぇ。

 でもちょっとうらやましいような。

 大体「源氏物語」を読んでいると、光る君をはじめ、貴族たちは仕事らしい仕事をしていません。

 あっちの女こっちの女とふらふらし、たまに宴会で舞を舞うと、光る君の舞は格別だなどと褒めそやされています。
 しかるべき地位に生まれれば、この世は極楽でしたでしょう。

 しかし一方、貧しい農民に生まれれば、一生地べたと格闘しながら食うや食わずの生活を続けるのです。

 私は間違いなく貧しい農民に生まれるでしょうから、平安の世は地獄でしょうねぇ。

 そういえばドナルド・キーン博士は、第二次大戦中、日本語の通訳として働きながら、「源氏物語」に惑溺したと言います。

 争いもなく、平和な世で美しいものばかりを描いた物語に逃避していたというわけです。

 ドナルド・キーン博士、80代半ばになって、日本国籍を取得して、日本に移住してしまいました。

 よほどわが国の文学、美的感性がお気に召したものと思われます。

源氏物語 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)
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