先般体罰を苦にして自殺した大阪市立桜宮高校のバスケ部キャプテン。
体罰は学校教育法に違反する犯罪であり、その死はまことに痛ましいものです。
高校2年生といえば、未来は無限に広がって見えて当然の年頃。
それが自ら未来を閉ざしてしまうとは。
で、それを受けて橋下大阪市長が同校体育科の入試を中止せよ、と言い出しました。
しかし入試は2月10日と聞きました。
もうあんまり日がありません。
願書を出してきた受験生にどう説明するのでしょうか。
きっと受験生のなかには、どうしてもこの高校の体育科に進みたいと、努力を重ねてきた者もいるでしょう。
たしかにバスケ部顧問以外にも多くの教師が日常的に体罰を行っており、教育現場としては集団狂気のような状況を呈してはいたようです。
しかしこのような事件の後、何の再発防止策も考えず、いきなり新入生の受け入れを拒否するとは、いかにも乱暴で稚拙な対応と言わざるを得ません。
ますは再発防止策の策定と、法を犯した教員の逮捕が先決で、将来を同校に託すことを夢見る少年少女の希望を打ち砕くことではないはずです。
かつて全共闘運動華やかなりし頃、東大が入試を中止した年があります。
当時の名門校、日比谷高校では東大を目指していた高校三年生が、急遽志望校を京都大学に変更したり、浪人してでも東大を目指したりといったことがあったようで、庄司薫の「赤頭巾ちゃん気をつけて」にコミカルに描かれています。
その時は安田講堂そ過激派学生が占拠するなどの大混乱ゆえやむを得ざる仕儀だったのでしょうが、桜宮高校における体罰は、たとえ組織としての規律が緩んでいたとしても、原則的には法を犯した個々の教員がその責任を負うべきです。
しかしマスコミの報道を見ると、どうも体罰教師を行き過ぎた指導を行ったという程度にしかとらえておらず、学校教育法に違反した犯罪者だという認識に欠けるようです。
確かに学校教育法では、体罰は禁止されているものの、体罰を行った場合の罰則規定がありません。
しかしそれは、刑法で傷害罪というのがあるわけですから、傷害事件として逮捕し、司法にその判断を委ねるべきだと考えます。
そうでないと、体罰は明白な犯罪行為であるのに、その犯罪性が歪められ、体罰は教育上必要だなどと叫ぶ戸塚ヨットスクールなどを増長させることになりかねません。
どうしても体罰が教育上必要だとお考えなら、体罰容認論などという犯罪行為を助長するようなことを叫ぶのではなく、学校教育法を改めよと、法律論を唱えるべきでしょう。
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