白洲次郎は吉田茂の治世を評して、「講和条約を結んで独立を果たしたとき、占領軍が作った憲法を破棄しなかったのは最大の失敗だ」と述べています。
今、安倍総理は時間をかけて改憲を行おうと目論んでいます。
維新の会の石原慎太郎共同代表は、改憲ではなく、今の憲法を破棄して一から作りなおすべきだ、と述べています。
私がいつも不思議に思うのは、改憲というといつも9条の話ばかり出ることです。
9条の解釈は変遷を遂げ、自衛の為であればなんでもあり、というところまで来ています。
集団的自衛権も近々行使が認められるでしょうし、核兵器の保持も、先制攻撃も、自衛の為に必要とあらば認められるでしょう。
こうなっちゃうと9条は改正したほうがすっきりはしますが、改正しなくても事実上改正したのと同じなので、今のままでもさしたる影響はありません。
私がどうしても改正したいと思っているのは、1条です。
天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。
と、あります。
これ、嘘ですよね。
総意とは、全員の一致した考え、という意味です。
しかし、天皇制に賛成しているのは概ね8割くらい。
総意ではありません。
私も残り2割の少数意見を支持する1人です。
天皇制はゆるやかに廃止すべきものと考えています。
天皇という存在がこれまでのわが国の文化を支えてきたことは間違いないと思いますが、いささか時代錯誤のような気がします。
おそらく、先祖代々続いてきたものを俺の代で止められるか、というのが大方の心情なのではないかと思います。
逆に言えば、俺より後の代なら止めても良い、ということになりはしないでしょうか。
つまり、積極的に現制度を維持する理由はなく、しかし積極的に廃止する理由もないので、とりあえず維持しときますか、というのが8割の天皇制支持者の大多数を占めているものと推測します。
しかし私は、積極的に廃止すべき理由があると思っています。
まず、皇族には選挙権や被選挙権、職業選択の自由、住居の自由などの社会権がほとんど認められていないため、現在の人権の考えからすると、人間では無いことになってしまいます。
皇族を不当に差別していると思います。
日本国民は堂々と被差別民を法的に作り出していることになりはしませんか。
大体皇族になりたいか、と聞かれれば、大方の人は嫌だ、と言うでしょう。
窮屈な生活を送るのは誰だって嫌なものです。
また、あまりに広大な皇居や東宮御所などの財産の有効活用を図り、宮内庁や皇宮警察、宮内庁病院などにかかる膨大な費用を抑制することができます。
以上のことから、私は憲法1条を改正もしくは廃止すべきと考えます。
また、国民の多くが積極的に天皇制の維持を望むなら、日本国民の総意に基づく、という文言を、日本国民の多数意見に基づく、に変更しないとまずいでしょうね。
嘘の法律というのはいけませんから。
また、例えば皇族が20歳になったら皇籍離脱の意志確認をし、離脱できるようにすべきでしょう。
生まれのせいで強制的に生涯籠の鳥というのはあまりにお気の毒です。
あるいはまた、天皇を20歳以上の全国民の中からくじ引きで選ぶというのも公平でよろしいかと思います。
もちろん、選ばれても、拒否する権利は認めましょう。
受ける者が現れるまで、何度でもくじを引けば良いのです。
あるいは希望者を募って、その中から相応しい人を内閣なり国会なりが選出するのでも良いでしょう。
天皇は万世一系をもって尊しとするわけですが、これを連続する血統だとする説があります。
しかし、大嘗祭を行うことで天皇の核とも言うべき魂が新帝に乗り移り、これをもって万世一系と呼ぶ、とする説もあります。
要するに天皇陛下の玉体は天皇霊の入れ物であり、天皇霊が代々乗り移ってきた、ということですね。
この説を採れば、くじで当たった人が大嘗祭を司れば、万世一系は維持されると考えられ、血統に拘る必要はありません。
でも多分、実際の改憲作業では、1条はいじらないんでしょうねぇ。
やれやれ。