人道に対する罪

社会・政治

 スペインの刑法がどういう作り込みになっているのか知りませんが、スペインの裁判所が、中国の江沢民元国家主席ら5人の元中国政府最高幹部に逮捕状を出したそうです。

 罪状は、人道に対する罪

 1980年代~1990年代にかけて、チベット族を大虐殺したり拷問にかけたりしたことが原因だと主張しています。

 当然、中国政府は猛反発。
 スペインの警察だって中華人民共和国に無理矢理乗りこんで江沢民らを逮捕することなど出来ないと承知のうえの逮捕状です。

 通常、犯罪が起きた場合、犯罪現場を所轄する警察が捜査し、逮捕しますね。
 また、犯人引き渡しの条約などが結ばれている場合には、犯人の母国に引き渡すこともあります。

 スペインも通常の犯罪に対してはそのように対処しているようですが、話が人道に対する罪となると、スペインとは直接関係の無い場所で、加害者も被害者スペイン人ではなくても、逮捕状を出せるんだそうです。

 一種のパフォーマンスでしょうねぇ。

 近頃国際的に評判の悪い中国の元政府高官に逮捕状を出すことで、スペインは高い人権意識を持っているのだと誇示したいものと思われます。

 事実上、彼らが逮捕されることは無いわけですが、国際社会へのアピールにはなるでしょうねぇ。

 スペインと言う国、お節介といおうか、不思議な刑法体系を持っているようです。

 人道に対する罪、という概念は、1945年、ナチの戦争犯罪を裁くために考えだされた新しい概念で、ニュルンベルク裁判で初めて適用され、東京裁判でも適用されました。

 元々の戦争犯罪は、捕虜を虐待したとか、民間人を殺害したとか、戦争の現場で起きる具体的な事例を対象としていました。

 しかし連合国は、ナチス・ドイツと大日本帝国に対しては、それでは手ぬるいと考えたのか、国家意思として民間人の大量虐殺を共同謀議のもとに行った、という幻想を作りだし、しかも事後法では裁いてはいけないという中学生でも知っているような常識を破って悪逆非道な裁判を行い、多くの日独の戦争指導者を処刑しました。

 唯一、インドのパール判事だけは、共同謀議の存在を認められる証拠が無いことと、何より事後法で裁くことは法の精神に反するとして、東京裁判の被告全員を無罪とする少数意見を述べましたが、それは秘密にされ、わが国の人々がそれを知ったのは、独立を勝ち得て後のことです。

パール判事の日本無罪論 (小学館文庫)
田中 正明
小学館

 パール判事が何より嫌ったのが、日本人から「日本の為にありがたい意見を述べてくれた」と感謝されることだったそうです。

 パール判事法の精神と証拠に基づいて中立の立場から全員無罪を主張しただけで、何国人であろうと関係ない、と述べています。

 普通に考えれば、より多くの智略を巡らせ、より多く殺害し、より多く破壊した国が勝利するのが戦争というものですから、英米中ソなどの連合国は、枢軸国以上に残虐な人道に対する罪を犯していると考えるのが常識的です。

 原爆の使用にしても、無差別大量爆撃にしても。

 そう考えると、人道に対する罪というのは、勝った国が無理矢理ひねり出した、胡散臭い概念だと思わずにはいられません。

 わが国では昔から、喧嘩両成敗を旨とします。

 武士であれば、負けた側の大将は負けたが故に処刑されるので、悪を働いたから殺されるのではありません。

 戦争にもルールがあります。

 終わって後、勝った側が復讐のために新たな罪をひねり出すなど、許されざる蛮行だと断じざるを得ません。

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