政治や経済の世界で、リボルビング・ドアということが話題になっています。
直訳すれば、回転扉、ということになりましょうか。
要するに、企業、学界、役所などを流動的に動けるシステムということで、学者が官僚になったり、経済人が学者になったり、といったことが頻繁に行われれば、自由主義経済は風通しがよくなり、さらなる発展が望める、ということのようです。
これ、小泉改革の時さかんに叫ばれた構造改革ですね。
でも構造改革でも、回転扉はわずかしか広がらず、むしろ派遣労働の規制緩和をしたせいで大幅に非正規雇用が増え、賃金格差が広まり、非正規で働く多くの人が将来に希望を持てないでいます。
私の職場にも、民間会社から教授で迎えた人もいますし、逆に企業の研究所に移った人もいます。
官僚が教授になったりすることもよくあります。
しかしそれは例外的で、産官学の連携はうまくいっているとは言い難いように思います。
新自由主義の柱の一つがリボルビング・ドア(回転扉)だったことは確かでしょう。
しかし、今、露骨に新自由主義を唱える人も減りました。
どんな体制を作っても、どんな主義主張をもってしても、万人が幸福になれるシステムなどあろうはずがない、ということを、あの小泉構造改革の嵐は教えてくれたのではないでしょうか。
大層人気のあった小泉元総理ですが、北朝鮮に拉致を認めさせた以外は、特に経済の分野において、失政の連続だったように思います。
過激な新自由主義に戻ることはもうできないでしょうね。
社会民主主義と自由民主主義の歩み寄りによる、穏健な政権が生まれることを期待して、民主党政権が生まれましたが、結局ガチャガチャになり、やっぱり自民万年堂でなければダメだ、ということになってしまいました。
自民党しか安心して政権を任せられないというのは不幸なことです。
回転扉を活用した人として、竹中平蔵氏が挙げられます。
大学教授から政治家になり、閣僚となって小泉改革を強力に進め、小泉内閣が退陣するや、しばらくして大学に戻りました。
企業の顧問なんかもやっているようです。
まさに産官学を渡り歩いた人ですね。
私にはそんな器用さも能力もありませんから、重たい回転扉を使ってひらりひらりとキャリア・アップしていくなんてことは不可能ですし、またそん面倒くさいことをする気もありません。
欲望は誰にでもあるでしょうが、立身出世は必ずしも万人が持つ欲求ではないと思います。
人並みの給料をもらって、自由な時間には自分の好きなことをやって生きていくことが、私には何よりの幸福であるように思います。