桜吹雪に牡丹雪

文学

 珍しく、桜も葉桜になろうという4月の今日、雪が降りました。

 こんなこともあるのですねぇ。

 雪中梅図というのは聞いたことがありますが、雪中桜図というのは聞いたことがありません。

 まるで起きてはならない現象が起きたようで、職場の窓から眺める外の風景は、美しくも禍々しくも感じられる、幻想的なものです。 

    と見て かげに桜の 乱るれば 花の笠着る 春の夜の月

 「山家集」にみられる西行法師の和歌です。

   雪かと思ったら散る桜であった、その向こうに月が見える、というほどの意かと思います。

山家集 (岩波文庫 黄 23-1)
佐佐木 信綱
岩波書店

  誠に美しく幻想的な和歌ですが、雪かと思うほど寒いにせよ、実際に降ってはいないわけです。

  ところが今日は散る桜と本物の雪が一緒に見られるという珍しい事態が起きており、これは目に焼き付けなければなりませんね。

 そのせいか今日はなんとなく気分が浮かれています。
 午前中、そわそわして窓の外ばかり見ていました。

 積もるほど降ることはないでしょうから、帰りの足を心配することもありません。

 むしろ少しでも長く、この牡丹雪と桜吹雪の共演を眺めていたいと思わずにはいられません。

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