純平、考え直せ

文学

 昨日は雨に閉じ込められましたが、今日は暑さに閉じ込められました。
 私は夏が一番嫌いです。
 不快な季節がやってきましたねぇ。

 今日も読書をしてすごしました。
 奥田英朗の「純平、考え直せ」を一気に読みました。

純平、考え直せ (光文社文庫)
奥田 英朗
光文社

 文庫本で300ページほどですが、ページをめくる手が止められないほど、抜群に面白いエンターテイメントでした。

 坂本純平は21歳、歌舞伎町を闊歩する下っ端ヤクザ。
 歌舞伎町では、水商売のおねぃさんやオカマ、ホストにいたるまで、気の良い若者ということでマスコットのように扱われる人気者でもあります。
 格好良い兄貴分に心酔して、何かと兄貴分の真似をしたがります。

 ある時、親分から鉄砲玉を頼まれ、純平は躊躇することなくそれを引き受けます。
 娑婆で3日間、豪遊しろと、親分と兄貴分から数十万円をもらいます。
 三日後の明け方、敵対する組の幹部を撃ち殺す予定です。

 純平は新宿プリンスホテルのスウィートルームに宿泊し、焼肉を食ったり鮨を食ったり。

 で、三日間の間に不思議な出会いをいくつも経験します。
 インチキ通販でオペレーターをする同い年のアバズレや、売り専門のオカマの青年、錦糸町でテキヤをやっている青年、果ては元大学教授で、真面目な生活に疲れてアウトローを目指しているという老人に師匠扱いされたり。

 普通の青春とは全く異なる青春劇が繰り広げられます。

 さらにはアバズレが携帯サイトに純平の掲示板を立て、掲示板では鉄砲玉をやめさせろとか、逆にがんがんやれといった応援メッセージとか、様々な書き込みがなされます。

 ラストはほろ苦いものですが、純平の未来を考えずにはいられないような、力強い余韻を持ったものに仕上がっています。

 普通に大学を卒業して勤め人になった私には、うかがい知ることが出来ないヤクザの青春。
 ヤクザの実態は知りませんが、こういうヤクザなら、一度やってみたい思わせるような、素敵な小説です。
 懲役はいやですが。

 世にヤクザ映画が流行るのもうなづけます。