天皇陛下が国民に向かって重大事を直接語り掛けたのは、終戦の玉音放送でした。
このたび今上陛下が、持って回った言い方ながら、退位を望まれていると国民に語り掛けたことは、終戦の玉音放送にも匹敵する大事で、国民は重く受け止める必要がありましょう。
持って回った言い方とはいえ、今上陛下の意思は明確です。
早く退位したい、ということ。
我々サラリーマンで言えば、辞表をたたきつけたようなものです。
陛下は過去、玉体にメスを入れたことがあります。
龍顔はすっかり好々爺のそれです。
御いたわしや。
考えてみればこういうことは十分有り得ることだし、現に過去、退位して上皇や法皇に御就きあそばした例は数多く。
問題となるのは皇室典範の改正でしょう。
厳密に言えば、皇室典範を改正しないかぎり生前に退位することはできません。
大正陛下の御代に、後の昭和陛下、当時の東宮殿下が摂政宮におなりあそばし、多くの国事行為を代行された例がありますから、摂政宮をおくことも考えられますが、今上陛下はこれも明確に否定なさいました。
政府はこれを受け、今上陛下限りに適用される特別立法を考えているようです。
緊急避難的にはそれは現実的な選択かと思います。
なにしろ今上陛下はご高齢ですし、何年も議論を続けていては、陛下の思いは遂げられることなく崩御せられてしまう恐れなしとしません。
但し、緊急避難的な特別立法を行ったとことろで、その時々の天皇陛下がご高齢になれば同じ問題が起きることは想像に難くありません。
政府が心配しているのは、皇室典範を改正するにしても、生前退位の条件をどうするか、ということのようです。
政治が介入して退位させるとか、あるいは天皇陛下ご自身が気まぐれや怠け心から恣意的に退位を望むとかいうことですね。
それら難しい問題はあるにせよ、生身の人間である天皇陛下に、死ぬまで働け、務めを果たせ、とは言えないし、言ってはならないと思います。
老後、人生の最期くらい、責任ある仕事から離れてのんびり暮らすことくらい許してやってほしいものです。