あり得ない幸福状態

思想・学問

 どこの職場もそうでしょうが、4月は業務量が多いうえ、人の異動などもあり、ひどく忙しいものです。
 そのせいか、軽いうつ状態が続いています。

 今、服薬している薬は気分安定剤と抗不安薬で、抗うつ薬は飲んでいません。
 抗うつ薬も出してもらったほうが良いのか、一過性のものだと思うので我慢したほうが良いか、迷うところです。

 精神障害(双極性障害)がひどい時は、これさえ治ればバラ色の人生が待っている、と思っていましたが、ほぼ治癒した今、思うのは、バラ色の人生などあり得るはずもなく、ただ普通に戻るだけなのだな、ということです。

 ユングは、心理療法について、心理療法の最高の目的は、患者をあり得ない幸福状態に移そうとすることではなく、彼に苦しみに耐えられる強さと哲学的忍耐を可能にさせることである、と述べています。 

 むべなるかな。

 しかし、苦しみに耐えられる強さ、というのは分かりやすいですが、哲学的忍耐とはいかなるものでしょうね。

 ユングの心理学から考えると、おそらくそれは全体性を身に着ける、ということではないかと思います。
 全体性とは、人間心理のこの部分が理性で、この部分が欲望で、この部分が宗教性で、といった分け方をすることは不可能であり、人間は全体として存在している、という意味です。

 人間の存在はそもそも哲学的であると言え、全体性を身に着けることは、とりもなおさず哲学的であるということで、それを哲学的忍耐と呼んだのではないかと推測します。

 ユングは東洋哲学、わけても仏教に深い関心を持ち、それらの考え方を心理療法に取り入れようとした人です。
 上の言葉も、東洋的と言うか、仏教的な感じがします。

 それならば、東洋の島国で、東洋の精神性にどっぷりと浸かって生きてきた私は、ユング派の心理療法が向いているのかもしれません。

 いずれにせよ、あり得ない幸福状態など、望むべくもありません。


にほんブログ村


人気ブログランキング