鼻がきつい

文学

 今日は4日ぶりの出勤。
 鼻の調子が悪くて、鼻水とくしゃみが止まらず、やむを得ず鼻炎カプセルを飲みました。
 この薬、よく効くのですが、眠くなるという副作用があります。
 4連休明けで勤労意欲がわかないところ、鼻炎カプセルによる眠気が重なって、仕事になりません。

 思えば子供の頃から鼻が悪く、小学校5年生から中学2年生にかけて、副鼻腔炎 を患って、医者に通っていました。

 大人になるにつれて良くなりましたが、風邪のひきはじめなどの場合、まず鼻から症状がでます。

 私の弱点なのでしょうね。

 鼻といえば、多くの人が、芥川龍之介の短編「鼻」を思い起こすのではないでしょうか。

 顎までだらりとぶら下がった異様に長い鼻を持つ高僧の葛藤を描いた物語です。

 長い鼻に強いコンプレックスを持ちながら、周囲へは、鼻のことなど1ミリも気にしていない、という態度を取り続ける高僧。
 高僧たる者が、そんなことに執着していると思われるのが嫌だったのです。

 ところがある時、若い僧から鼻を短くする秘法を聞きつけ、これを実行したところ、たちどころに鼻は短くなり、よくいる鉤鼻程度にまでなったのです。
 高僧は晴ればれした気分になって、長年自分を苦しめた原因を取り除いたことを喜ぶのです。

 しかし、周りの者の反応は、芳しいものではありませんでした。

 鼻が長かった時よりも、嘲笑されることが多くなったのです。

 高僧、またもや鼻の長さに苦しむことになります。
 
 しかし、数日がたち、突如として鼻は元の長さに戻ってしまいます。
 長い鼻を見て、高僧は今度こそ本当に晴ればれした気分を味わうのでした。

 「今昔物語集」「池尾禅珍内供鼻語」「宇治拾遺物語」「鼻長き僧の事」などから題材を取ったと言われています。

 

 しかし、それらから題材を取りながら、「鼻」は現代的な、優れた心理小説になっているように思います。

 現代人は見た目の美醜に囚われ、そのことを気にするあまり、神経症的な思い癖を身につけてしまいがちです。
 それら心理的な要素を取り入れた、可笑しみのある短編だと思います。

 私は副鼻腔炎を患っている時、よく大きなくしゃみをしたり、鼻をかんだり、鼻をすすったりしました。

 小学校高学年から中学生の思春期の少年にとっては、とても恥ずかしく感じました。

 その時のことを思い出される、私にとってはややきつい物語でした。