痛み

その他

 近頃めっきり春めいてきました。
 気が付けば3月。
 当然のごとく、季節は移ろっていきます。

 ニュースを見ればロシアのウクライナへの侵略の話ばかり。
 プーチン、気が狂ったのか焼きが回ったのか、現代では考えられない横暴ぶり。
 涙を流すウクライナの人々を見るにつけ、人間の愚かしさを嘆かずにはいられません。

 しかし私たち夫婦にとって最大の問題は、義母のこと。
 足が弱って歩くことはおろか立ち上がることさえ難儀している様子。
 電話に出るにも、固定電話が置いてある場所に這って行かなければならず、電話を掛けることさえ憚られます。
 とにかく足と胸の痛みは尋常ならず、痛み止めの飲み薬、注射、弱いモルヒネが配合された張り薬などを使っても痛みは治まらず、このところ同居人は休暇を取って義母の世話をしに行っています。
 土日はもちろん義母と過ごします。
 同居人が「このままでは介護離職に追い込まれる」、と思わず義母につぶやいたところ、絶対に嫌だと言い張っていた介護施設に、とりあえず来週の火曜日から2週間のショートステイをすることになりました。 

 齢82歳。
 
 東京大空襲では母親と幼い妹を失いながらなんとか生きながらえてきましたが、人生最大の危機を迎えています。
 施設は我が家から車で10分の至近距離ですが、そこはデイケアとショートステイのみのサービスしかないため、2週間で痛みが治まらなければ、別の、おそらく終の棲家となるであろう施設を探さなければなりません。
  義母は他人である私に老いた姿を見せることを潔しとせず、私と会うことを嫌います。
 すべては、一人娘である同居人の肩に押しかかっています。

 時あたかも年度末。
 我が業界は一年で最も忙しい時期を迎えており、そうそう休暇を取ってもいられません。
 わずかながら、同居人にとって負担が軽くなることを望みます。

 こういうのは順番で、順番が狂うことほど不幸なことはありません。
 そういう意味では、義母の老いは当然のことかもしれません。

 生まれ、成長し、人生を戦い、疲れ果てて老いていくその姿に、人間の真実が込められており、そのことに慄然とします。

 せめては義母の余生が、痛みなく、安らかであらんことを。