欲望

その他

 昨年の10月中旬に激しい咳が続き、喘息ということで3日間ほど入院しました。
 夜中に咳が続いて眠れず、朦朧としてきて、これは本当にまずいと思い、同居人に頼んで救急車を呼んでもらいました。
 そこから翌朝目覚めるまでの記憶がほぼありません。
 一晩特別室に入り、朝から一般病棟に移りました。

 あの時は本当に心細く、生きた心地がしませんでした。
 大病で長期間入院するのはさぞ辛かろうと思いました。
 それまで、煙草を毎日一箱程度吸っていましたが、これを機にほぼ止めました。
 ほぼというのは、時折吸ってみたりしたのですが、すぐに喉というか気管支の調子が悪化するので、阿呆らしくなり、ここ半年程度は全く吸っていません。

 よく煙草を止めると飯が旨く感じるようになり、太ると聞きますが、本当でした。
 先般行われた職場の健康診断で、1年間で約5キロ太っていたことが分かりました。
 太ったと言っても元が痩せていたので、BMIが標準値になっただけで、むしろ健康になったとも言えます。
 ただし油断するとぶくぶく行ってしまうかもしれません。

 もう15年も前のことですが、うつ病で休職していた頃、ほとんど動かず、それでいて飯はしっかり食っていたら、20キロ以上太ってしまったことがあります。
 抗うつ薬の副作用に太りやすいということがあるので、それもあって肥えてしまったのでしょうね。
 内科医からは糖尿病の治療を始めることを検討しなければならないと脅されました。

 しかし程なくして父が他界。

 そのショックで食欲が極端に落ち、最初の1か月で6キロ、1年間で24キロも体重が落ち、がん患者かエイズ患者みたいになってしまいました。
 その後数年その状態が続きましたが、やっと父の死を乗り越えたのか、少しづつ体重が戻りました。
 身長と違って体重は減ったり増えたりするのが厄介です。

 ただし、増えた時も減った時も、何の努力もしていません。
 食いたければ食い、食欲が無ければ食わなかっただけのことです。

 禁煙も同様です。
 退院後も時折吸っていたのが、いつの間にか吸う気が起きなくなっただけの話です。

 これからも肥えたり痩せたりはするのでしょうが、もう煙草を吸うことは無いように感じます。
 旨く感じなくなってしまいましたし。
 きっとそれは良いことなのでしょうけれど、少し寂しくも感じます。

 年を取れば出来なくなることが増えるでしょうから、煙草を楽しめなくなったのも、体調の問題で、これも加齢によるものだと思います。

 晩酌は相変わらずやっていますが、少々過ぎると翌朝に残るようになりました。
 そのうちほんの少ししか飲めなくなるんだろうと思います。

 食欲も性欲も少しづつ落ちていくものと思います。
 年を取ると早起きになると言いますから、睡眠欲さえ落ちるのでしょう。

 これら欲望の低下は、生きたいという欲望を減ぜせしめ、緩やかに死を受け入れる準備ができ、100歳までも生きたなら、お迎えを切望するようになるのかもしれません。

 こればっかりは自分が100歳まで生きてみないと分かりませんが。

 緩やかな衰えがいつの間にか始まっているようです。
 65歳まで働くとしたら、まだ11年半もあります。
 そんなに気力体力が保てるのか今から心配です。