リビアで反政府暴動が起きてから早くも五カ月、カダフィ大佐なかなかしぶといですねぇ。
現代にも中国や北朝鮮、アフリカ諸国などに独裁国家が存在しています。
私たち自由主義諸国民にとっては当然である自由民主主義というものが、普遍的な価値ではないことがよくわかります。
私たちはかつての植民地争奪の時の欧米諸国のように、政治体制の異なる国家に自分たちの価値観を押し付けるような愚は避けなければなりません。
もちろん、人権を無視した拷問や虐殺が行われているならば、制裁は行わなければなりませんが。
全体主義と言えば、私にはなつかしい小説があります。
ジョージ・オーウェルの「動物農場」です。
中学三年生の夏休み、進学塾の英語の宿題で、これを原書で読み、全文翻訳せよ、とのお達しが下ったのです。
このほかにも別名電話帳と呼ばれる分厚い問題集や、私は数学が苦手だったので、特別に数学の問題集も課されました。
遊んでいればあっという間の夏休みですが、これら宿題に四苦八苦したことをなつかしく思い出します。
数学の難問・奇問に比べれば、Animal Farmを翻訳することは、気楽で楽しい作業でした。
わからなければ辞書をひけば良いし、何よりジョージ・オーウェルの英文は分かりやすく、ストーリーは抜群に面白いときています。
また、初めて原書を翻訳するということに、少々興奮気味だったことも確かです。
呑んだくれの農場主に反旗を翻した動物たちが、豚の指導者のもと、動物主義の理想の農場を築こうとするのですが、やがて豚同士の権力争いの結果、独裁体制がしかれ、犬を親衛隊にして、羊や馬を酷使する、という、まんま当時のソビエトを風刺したものです。
働き者の老いた馬の口癖が泣かせます。
「I will work harder.(わしがもっと働けばいいのだ)」
と言うのです。
その馬も、衰えると売り飛ばされてしまいます。
結局、農場主が人間から豚に代わったって、何一つ良いことはなく、むしろ混迷の度を深めていくという、わりと骨太な小説です。
暑い夏を乗り越えて、私は自信満々で受験に臨み、見事砕け散るという苦い結果を味わうことになりました。
もともとひねくれ者だったのに、この一件でますますひねくれ、世を斜めに見る癖がついてしまったのです。
しかし、今の生活は気に入っています。
仕事はほどほどで残業せず、酒を飲んだりDVDを観たり美術館に行ったり。
もしかすると私は長い闘病の後、理想の生活を手に入れたのかもしれません。
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