文学

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寒の内

今は寒の内。 1月6日に小寒を迎え、1月21日の大寒をピークとして、2月4日の立春までが最も寒い時期とされます。 今日もどんよりと曇って、窓の外は寒そうです。 この前の土日はセンター試験が行われましたね。 センター試験というとよく雪が降りますが、首都圏は雪を免れました。 受験生にとっても、受験準備からセンター試験当日まで大わらわで対応にあたる大学職員にとっても助かりました。 センター試験の日に雪かきは辛いですからねぇ。 しかしこの寒さの中にこそ、萌えいずる命の息吹が脈打っているのだと思うと、生きとし生ける者すべてが愛おしく感じられます。 雪ふれは 冬こもりせる 草も木も 春にしられぬ 花そさきける 「古今和歌集」に所収の紀貫之の和歌です。 雪の下で、春には見ることのできない花が咲き誇っているのだ、という想像上の歌です。 命の不思議と、人々の切ない願いとが一体となって生まれた、幻想美の和歌なんですねぇ。 私たち日本人は、こういう気持ちで春を待ったのですねぇ。 北国であれば切実に、南国であれば想像上の雪を想って、待ったのですねぇ。 わが民族ほど季節感を大切にする人々はおりますまい。 手紙は...
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誰のために若菜を?

さっきから冷たい雨に雪が混じり始めました。 寒そうですねぇ。  冬は夏よりも酒の旨さが三割増しくらいに感じられます。 酒が体を温めてくれるからでしょうか。 このブログで何度か紹介しましたが、私のお気に入りは、栗焼酎のダバダ火振りです。 ほんのり甘い、ブランデーのような香りがし、口当たりが良くて飲みやすいのです。 私はこれをロックでやります。 高いのでそうしょっちゅうは飲めませんが。 最高の焼酎だと思います。ダバダ火振(栗焼酎)900mlダバダ火振ダバダ火振ダバダ火振(栗焼酎)1800ml無手無冠無手無冠 冬の酒が旨いのは、逆にいえば冬が寒々しく、侘しい季節だからでしょう。 里人の 裾野の雪を 踏み分けて ただ我がためと 若菜つむらん 後鳥羽上皇の和歌です。 上皇は承久の乱に敗れて隠岐に流され、寂しい晩年を過ごしました。 上の和歌は、光孝天皇の、 君がため 春の野にいでて若菜つむ 我が衣手に 雪はふりつつ という御製を念頭に置いているものと思われます。 御製では君がために若菜をつむのに、上皇は、ただ我がために若菜をつむんですからねぇ。 まして雪を踏み分けてなんて、涙なしには詠めません。 ...
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寒の入り

今日は寒の入りですね。 小寒とも言います。 大寒は1月下旬で、2月上旬の節分までが、もっとも寒い時期とされます。 小寒の氷大寒に解く、とも言い、年によっては小寒のほうが大寒よりも寒いこともあるようです。 一年で一番寒いこの時季に、寒々しい和歌を。 山ざとは 冬ぞさびしさ まさりける 人目も草も かれぬと思へば                           『古今和歌集』  源 宗于 有名な百人一首の歌ですね。 十分冷えたところで、今度は冬の暖かい我が家を詠んだ句を。 埋火や 終(つい)には煮ゆる 鍋のもの 与謝蕪村 うづみ火や 我かくれ家も 雪の中 与謝蕪村 これ出しちゃったら他のものは出てきません。  それほど私は与謝蕪村の冬の句を好んでいます。  特に上の2句は抜群に出来が良いように思います。  なんだか雪が舞う凍てついた冬が、暖かい我が家を引き立たせ、真冬の籠り居を桃源郷のような愛しさで包んでくれるような気がします。 私は仕事帰り、寒風吹きすさぶ道中、上の2句を呪文のように唱えながら暖かい我が家を想像して、帰路を急ぐのです。新版 古今和歌集 現代語訳付き (角川ソフィア文庫...
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山田風太郎生誕祭

今日は山田風太郎の誕生日だそうです。 生きていれば今年で90歳になっていたはず。 残念ながら、79歳で亡くなってしまいました。 有名な「戦中派不戦日記」には、終戦の前後、勇ましい言葉が並んでいます。 後に不戦日記と名付けた文章にすら、勇ましい言葉が並ぶあたり、戦時中に青春時代を過ごした若者の正直な心の発露が見てとれます。 私は「魔界転生」が好きで、とくに沢田研二が天草四郎を演じた最初の映画化を好んで観ました。 後の窪塚陽介主演のはちょっと期待外れでしたね。 沢田研二演じる天草四郎が魔界から甦り、宮本武蔵や細川ガラシャなど、この世に恨みを抱く者を次々と魔界からよみがえらせ、彼らの望みをかなえながら幕府転覆という天草四郎最大の望みを果たそうとする壮大なダーク・ファンタジーです。 天草四郎と細川ガラシャの妖しい美しさ、画面一杯に漂う妖気、この手のエンターテイメントとしては最高の出来です。 しかし山田風太郎がこれを書いた時、どんな思いだったのでしょうね。 単純に、鬼面人を驚かす大作を書いてやろうと思ったのではないだろうと推測します。 そこには、不遇の死を遂げた者の恨みの深さが流れているからです...
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道歌

和歌に道歌というジャンルがあります。 和歌というともののあはれや季節感、恋情などを詠う雅なものという印象がありますが、道歌は仏教の教えや道徳などを示す抹香くさいものです。 正直、私はあまり好みません。 しかし、正月、仕事始めの日くらい、そういう歌に接して心を引き締めることも必要かと思います。 怠らず 行かば 千里のはても見ん 牛の歩みの よし遅くとも  詠み人しらず 怠けずに進めば、牛のように遅い歩みでも千里までも進むことができる、という意かと思います。 日々の地道な努力を奨励する道歌ですが、いかにも無粋な歌ですねぇ。 では、こういう仕事始めの句はいかがでしょう?  天は晴れ 地は湿(うるお)ふや 鍬始(くわはじめ)   正岡子規 ここにはもののあはれは感じられませんが、たくましい農民の仕事始めの様子が大らかに、生き生きと活写されています。 説教くさい感じは微塵も感じられませんが、新年も努力しようという気分が自然に湧いてきます。 文芸に限らず、絵画でも音楽でもそうですが、主持ちの芸術はつまらないですねぇ。 道歌も仏教や道徳の普及のため、という主持ちの和歌です。 ためにする芸術のつまらな...
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