文学 すっとこどっこい
学生の頃、近代文学概論という講義がありました。 てっきり夏目漱石・森鴎外あたりから後の文学を取り上げるのだとばかり思っていたら、思いっきり古く、仮名垣魯文でした。 ずっこけましたねぇ。 江戸後期から明治初期にかけて活躍した戯作者で、近代文学というより近世文学に近く、面食らった覚えがあります。 彼の作品に「西洋道中膝栗毛」という戯作があります。 「東海道中膝栗毛」で大活躍したやじさん、きたさんの孫がロンドン博覧会に出かけるという趣向で、戯作的滑稽さと、当時の日本人の西洋文明への憧れをくすぐって、たいそうなベストセラーになったようです。 仮名垣魯文本人に洋行の経験はなかったそうですが、見てきたような嘘を書き連ねるのが戯作だとしたら、戯作の王道とも言えましょう。 孫たちも爺さん二人に負けず劣らず間抜けで、笑わせます。 近代文学概論といういかめしい名前の講義ですが、抱腹絶倒でした。 江戸っ子というものは、どうしてああすっとこどっこいで騙されやすく、けんかっ早いのでしょうねぇ。 江戸落語に出てくる人物もたいていすっとこどっこいです。 少々まともと思われる長屋の大家さんも、やっぱり抜けています...