文学

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みじか夜

今日は少し涼しいようです。 これなら職場に冷房は入らないでしょう。 じつはこの2~3日、冷房が効いて難儀しています。 冷房が入っていると、くしゃみが止まらなくなり、たまらず常備している鼻炎カプセルを飲むのですが、今度は眠くてたまらなくなるのです。 冷房していないときは、長袖のシャツだけで勤務していますが、冷房が入るとジャケットを羽織らずにはいられません。 しかし世の中には暑がりの人も多く、冷房を入れても半袖で平気な人も少なくありません。 うまくいかないものですねぇ。 東日本大震災直後の夏は節電とかでほとんど冷房が入らず、しかもその時、私は今より体重が20キロ以上重かったので、ひどい暑がりでした。 あの夏は難儀しました。 すぐに冷房を入れてくれるようになると、今度は激ヤセして寒がりになっているとは皮肉なものです。 わが国の建築は、概ね夏を快適に過ごせるように作られていますね。 それだけ高温多湿のわが国の夏が過酷だということでしょうが、今はエアコンが普及して、建物に入れば寒いくらいです。 私も真夏、家ではずうっと冷房をかけています。 夜も一晩中。 思えば子供の頃は自室にエアコンがなくて、寝...
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自動記述

かつて一世を風靡した芸術運動に、シュールレアリスムがあります。 「シュールレアリスム宣言」を著し、この運動の法王とまで呼ばれたアンドレ・ブルトンは、自動記述による小説執筆に挑み、一部好事家からたいへんな評価を受けました。シュルレアリスム宣言・溶ける魚 (岩波文庫)Andre Breton,巖谷 國士岩波書店 自動記述とは、構想を練ったりすることなく、ただ、原稿用紙に向かい、思いのままに文章を書きつけるという手法で、私はこの技法に大いに疑問を持っています。 正直、自己満足のように思えます。 読者を楽しませるという意識が希薄なような。 自動記述とは意味が異なりますが、私はしばらく夢日記をつけていたことがあります。 枕元にノートとペンを置いておき、目覚めるや見た夢の内容をできるだけ詳細に書き付けるのです。 これはその後、私を恐怖に陥れることになります。 日に日に夢の記憶が鮮明になり、目覚めているのか夢の中にいるのか、判然としなくなる、という危険な状態に落ち込んだのです。 ために、夢日記は半年を経ずして中断することになります。 しかしその経験は、怖ろしいものであると同時に、どこか甘美な、麻薬の...
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天命

我、週末の終わりを惜しみて酒に逃れたり。酒、我をして一瞬の快楽に誘い入れ、心地よし。我、明日の激務を忘れたることしばし。能ふなら永遠に忘れたし。しかれども我、そが瞬時のまやかしなるを知りたり。知ってなほ、忘却を願ふは、我が魂の怠惰なりや。そも、魂の怠惰とは何ぞ。精神の運動とは何ぞ。我、幼き日より、一つ、求めたり。すなわち、美を求めむがための運動なり。我、この世に堕ちたる所以のものは、美を求めむがための運動おこしめむと欲するために他ならず。されど我、美を忘れて久しく、これぞ魂の怠惰なりや。今生の我、何をもってか生きむ。飯、食いたきがゆえか、酒飲みたきがゆえか、女抱きたきがゆえか、賭場荒らしたきがゆえか。さあらず。断じてさあらず。我、今生にて求めたるは、美なり。わけても言の葉の美なり。我、何をか忘れむ。我、初老の域に達し、我が天命を思い至るべし。我、何をもって今生をわたるべきか。思い至るべし、天命。
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メタからパラ、そして古典回帰か

筒井康隆の新作短編集「世界はゴ冗談」を読みました。 御年80歳の大先生、ほとんど言葉遊びのような作品から、かねてご執心のメタフィクションを取り上げたものまで、多彩なラインナップで楽しませてくれます。 これほどの大家になると、何を書いても許されるし、売れるのですねぇ。 うらやましいかぎりです。 メタフィクションは、フィクションのフィクションなどと呼ばれ、登場人物が自分が虚構の存在だと自覚しつつ読者をフィクションに取り込むような、実験的な小説群のことで、私はあまり得意ではありません。 どうしても物語の破綻が避けられないからです。メタフィクション―自意識のフィクションの理論と実際結城 英雄泰流社 21世紀に入ると、インターネットのゲームなど、物語の享受者に、物語への参加を促す、メタフィクションが極限にまで高められたパラフィクションという概念が登場します。あなたは今、この文章を読んでいる。:パラフィクションの誕生佐々木 敦慶應義塾大学出版会 しかしパラフィクションの登場により、読者を物語に参加させると、より一層作者の絶対性が高まるという矛盾が提起されるようになってしまいました。 科学の進化は不...
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月光

月光夜を照らす。 その光妖しかれども煌々たり。 我独り、マンションのベランダに出で、月光を浴びたり。 手には二合徳利と杯。 一口二口酒を含めば、月光いよいよ妖しく光りたり。 酒にか月光にか、我酔いたる心地して、陶然たり。 知らず、人の道。 なお知らず、生死の意味。 知りたくも無し、労働の甲斐。 ただ我、一瞬の愉楽に沈むばかりなり。 皐月半ばを過ぎ、田、青々と稲穂を揺らす。 さりながら宵には外気凛冽として、酒の温め有難し。 月あまりに巨大なれば、我、酒の酔いも手伝ひて、月光に飲み込まれたる心地す。さあれば、月に住まいするかぐや姫との逢瀬を楽しみたき欲わき出づる。 我、気づけばはるか天空を駆け、月にいたる。 かぐや姫が住まいする宮殿はいずこにや。 あな怖ろし。 月に流麗たる宮殿を見ず。 かぐや姫の花の顔(かんばせ)も見ず。 げに怖ろしき死の気配充満したるを感得し、我、恐怖に打ち震え、落涙滝の如し。 はしるはしる、我が狭小たるマンションのベランダを目指し、ひたすら天空より落下す。 気づけばベランダにて、二合徳利を抱えおる。 さらに一杯二杯の酒を含み、再び月眺むれば、相も変らぬ妖しき光を放ち、...
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