文学

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夜想

昨夜、夜更かしして読みかけの小説を読み終わりました。 久しぶりに、物語の世界にどっぷり浸かれたひと時を持てたことは、私の喜びとするところです。 小説は貫井徳郎の「夜想」。 この作家、私とほぼ同世代で、魂の暗闘をミステリーに仮託して描く骨太な作風の人です。 ミステリーとしての読みやすさや面白さにこだわるのを止めて、自身の内奥から湧き出でる言葉を紡げば、大変な作家になると思うのですが。 交通事故で妻と幼い娘を喪った30代前半の主人公。 仕事は手につかず、ミスばかりしています。 ある時、喫茶店でアルバイトをしている女子大生と出会い、運命が変わっていきます。 女子大生は、物に触れることでその持ち主の過去や精神状態が分かってしまうという特殊能力の持ち主だったのです。 主人公が落とした定期入れを女子大生が拾い、主人公の深い心の闇を覗いて涙をこぼしたことから、二人の関係は始まります。 主人公は心から自分の悲しみを理解できる人を見つけた喜びで、夜の闇を彷徨っているような状態から抜け出せたと感じ、女子大生を崇拝し、彼女を中心に、悩み相談のような、占いのような会を立ち上げます。 やがてその会は雑誌に取り上...
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殺戮にいたる病

掃除や洗濯、買出しなどの家事に精を出した他は、読書をして過ごしました。 「殺戮にいたる病」という小説を詠みました。殺戮にいたる病 (講談社文庫)我孫子 武丸講談社 ネクロフィリア(死体愛)の性倒錯者の連続殺人鬼を描いた作品です。 主人公は、夜の町で美しい女性をナンパしては殺害し、死体を犯すわけですが、彼はただ一度しかできないその性交を、真実の愛と感じています。 犯行を犯してしばらくは、その思い出にひたって至高の時を過ごしますが、一ヶ月もすると記憶は薄れ、あれは真実の愛などではなかったと感じ、新たな愛を求めて彷徨うのです。 しかしこの小説の優れた点は、人物や時制を混乱させ、読者にトリックを仕掛け、ラストの数行に到って完全に読者を呆然とさせるほどの、騙りを成功させているところです。 ネタバレになってしまうので詳述はしませんが、叙述トリックと呼ばれる手法を見事に駆使しており、騙される快感に引きずり込まれることになります。 やや大仰で思わせぶりなところは鼻につきますが、それも叙述トリックの一貫と思えば、目をつぶっても良いでしょう。 なかなか楽しい読書体験でした。にほんブログ村 本・書籍 ブログ...
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神のふたつの貌

私は日蓮宗の寺院で生まれ育ちました。 それを知ると珍しがって生活の様子を聞かれることも珍しくありませんでした。 普段全く考えることがありませんが、日本にも少数ながら牧師の家で生まれ育った人もいるわけです。 お寺のように世襲が当たり前なのかどうか知りませんが、父親の跡を継ぐ者もいるのでしょう。 その場合、少なくとも表面的には、キリスト教の教えを信じているように振る舞わなければ、食いっぱぐれてしまいます しかし現代の日本に生まれ育った場合、神による天地創造だとか、最後の審判だとかいうSFちっくな概念を頭から信じることは難しいように思います。 わが国の空気を吸って普通に育てば、進化論が正しいと思うでしょうし、天国も地獄も存在しない、まして神様なんて存在しないと思うのが一般的でしょう。 そもそも私にはキリスト教徒の知り合いが一人もいません。 彼らがどんなふうに世界を見て、解釈しているのかなんて知る由もありません。 もしキリスト教が説くような絶対的な神様が存在するのだとしたら、ずいぶん意地悪なことをするものだと思います。 世に争いの種は尽きないし、凶悪犯罪も後を絶ちません。 飢えや貧困に苦しむ人...
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みじか夜

今日は少し涼しいようです。 これなら職場に冷房は入らないでしょう。 じつはこの2~3日、冷房が効いて難儀しています。 冷房が入っていると、くしゃみが止まらなくなり、たまらず常備している鼻炎カプセルを飲むのですが、今度は眠くてたまらなくなるのです。 冷房していないときは、長袖のシャツだけで勤務していますが、冷房が入るとジャケットを羽織らずにはいられません。 しかし世の中には暑がりの人も多く、冷房を入れても半袖で平気な人も少なくありません。 うまくいかないものですねぇ。 東日本大震災直後の夏は節電とかでほとんど冷房が入らず、しかもその時、私は今より体重が20キロ以上重かったので、ひどい暑がりでした。 あの夏は難儀しました。 すぐに冷房を入れてくれるようになると、今度は激ヤセして寒がりになっているとは皮肉なものです。 わが国の建築は、概ね夏を快適に過ごせるように作られていますね。 それだけ高温多湿のわが国の夏が過酷だということでしょうが、今はエアコンが普及して、建物に入れば寒いくらいです。 私も真夏、家ではずうっと冷房をかけています。 夜も一晩中。 思えば子供の頃は自室にエアコンがなくて、寝...
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自動記述

かつて一世を風靡した芸術運動に、シュールレアリスムがあります。 「シュールレアリスム宣言」を著し、この運動の法王とまで呼ばれたアンドレ・ブルトンは、自動記述による小説執筆に挑み、一部好事家からたいへんな評価を受けました。シュルレアリスム宣言・溶ける魚 (岩波文庫)Andre Breton,巖谷 國士岩波書店 自動記述とは、構想を練ったりすることなく、ただ、原稿用紙に向かい、思いのままに文章を書きつけるという手法で、私はこの技法に大いに疑問を持っています。 正直、自己満足のように思えます。 読者を楽しませるという意識が希薄なような。 自動記述とは意味が異なりますが、私はしばらく夢日記をつけていたことがあります。 枕元にノートとペンを置いておき、目覚めるや見た夢の内容をできるだけ詳細に書き付けるのです。 これはその後、私を恐怖に陥れることになります。 日に日に夢の記憶が鮮明になり、目覚めているのか夢の中にいるのか、判然としなくなる、という危険な状態に落ち込んだのです。 ために、夢日記は半年を経ずして中断することになります。 しかしその経験は、怖ろしいものであると同時に、どこか甘美な、麻薬の...
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