Friday  Night

文学

 やっと金曜日の夜を迎えました。

 嬉しいですねぇ。

 今週も5日間、色々ありました。

 栗焼酎をやりながら、この記事を書いていますが、酒の味が一段上がるというものです。

 白玉の 歯にしみとほる 秋の夜の 酒はしずかに 飲むべかりけり

 私が好む若山牧水の代表的な和歌です。

 秋でなくとも、独り飲む酒は、静かがよろしいようです。

 かつて、狂乱のバブルの頃、花金だとか言って、金曜日の夜はすべからく夜の町に繰り出すべし、という風潮がありました。
 それをしない者はさびしいやつだとの謗りをまぬかれませんでした。

 愚かなことです。

 毎週毎週金曜日だからと言って遊びの予定を入れるなど、狂気の沙汰と言うべきです。
 なんとなれば、開放感に浸れる日には、独り静かに過ごすことこそが、最も贅沢な時間の過ごし方だからです。
 でも当時は競うように予定を入れている愚か者がたくさんいました。
 私は密かにそんな連中を冷笑し、独り、静かに過ごすよう努めていました。

 また、当時絶大な人気を誇ったDREAMS COME TRUEは、「決戦は金曜日」という馬鹿げた曲を歌って大ヒットを飛ばし、世の多くの女性を惑わせました。
 すなわち、金曜日の夜に惚れた男と初めてデートする緊張感を、決戦という大仰な言葉で表現したものです。



 この曲のせいで、金曜日の夜はただ予定を入れるだけでなく、異性との逢瀬を楽しむことがより良い、という阿呆らしい風潮を助長しました。

 仕事とはいえ、こんな馬鹿げた曲で金儲けを狙うとは、あまりにあざといというものです。
 そのために不当な差別にさらされた恋人や異性の友人がいないあまたの青少年を苦しめたのですから、反省すべきでしょう。

 全く馬鹿げた時代でした。
 だからこそ、長くは続かなかったのでしょう。

 1960年代の狂気じみた学生運動の嵐にも比すべき、現代史から消し去りたい頃だったと言わざるを得ません。

 私はと言えば、極端なひねくれ者ゆえ、例え親密な異性がいても、金曜日だけは絶対会わないと決め、さらに当時恋人と過ごさない者は人に非ず、という風潮があったクリスマス・イブにも絶対に会わないと決めていました。
 世間も馬鹿げていましたが、頑なにそれを拒もうとする私もまた、馬鹿げていたのですねぇ。
 考え方が真逆に振れただけで、やっぱり時代の影響を受けていたのだと、今になって思います。

 当時、親しくいていた異性は、私が天邪鬼だと知っていたため、べつだん文句も言いませんでした。
 あるいはそれを利用して、別の男とよろしくやっていたのかもしれませんが、それなら互いの利益になって結構なことだと思います。

 こうして独り静かに酒を飲む金曜日の夜は最高ですねぇ。
 
 同居人は残業なのか、あるいは浮気でもしているのか、20時の今、まだ帰りません。
 理由はどっちでも良いから、できれば私が酔って眠るまで、帰らないで欲しいものです。

決戦は金曜日
Dreams Come True,中村正人
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The Swinging Star
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若山牧水歌集 (岩波文庫)
伊藤 一彦
岩波書店

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