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思想・学問

ここ30年ばかりの愚かな流行歌の盛況ぶりに嫌気がさしているのは私ばかりではありますまい。 特に聞き苦しいのは男女間の恋を表わすのに、愛という言葉を多用することです。 もともと愛は贈り物をする、という意味で、転じて、相手を慈しむとか、ある物事に執着する、とかいう意味になったものです。 日本では長く、親子や兄弟間、もしくは広く生命全般に対して使われる言葉でした。 西郷隆盛の敬天愛人などは、特定の人を愛するのではなく、人類全体を愛するという意味ですね。 仏教では、愛欲などといって、愛は執着を表わす言葉で、否定的に使われていました。 男女間の場合は、恋もしくは色と言ったものです。 明治初期、北村透谷あたりが、欧米で流行り始めた男女間の純愛という思想にとびついて、恋愛至上主義的な言説を弄して当時の少年少女を惑わせたのが、愛という言葉の倒錯的な用い方の始まりでしょう。 あまたいる異性の一人だけに対して愛という言葉を用いるのは、あまりに排他的で、本来の用法から逸脱しています。 そうは言っても、言葉は時代とともに変化していくもの。現在のような用法はあまりにも広く行われ、国語辞典にも変化後の旨が記載され...
映画

オトシモノ

昨夜、DVDで「オトシモノ」を鑑賞しました。 沢尻エリカ主演の心霊ホラーです。 駅で定期券を拾った者が次々に行方不明になっていきます。 定期券の落とし主は何者なのか。 落とし主らしい女の幽霊は青白くて髪が長い、いかにもな感じです。 他に若槻千夏や小栗旬が出演しています。 それにしても沢尻エリカは女子高生に見えませんね。 水商売の女に見えます。 オチがはっきりしなくて残念でしたが、和製ホラーらしい展開は観ていて安心感を覚えました。ちょっと怖かったし。オトシモノ 古澤健,迫本淳一,田中江里夏アミューズソフトエンタテインメント↓の評価ボタンを押してランキングをチェック!
思想・学問

H.G.ウェルズと退廃

子どもの頃、H.G.ウェルズのSF小説をよく読みました。 「タイム・マシン」、「透明人間」、「モロー博士の島」等々。 いずれも優れたエンターテイメントであり、19世紀末の社会を風刺する文明批評でもありました。 これらの小説と退廃を結び付けて論じた論文を読みました。 太田省一という社会学者による論文で、タイトルは「退廃・獣人・嫌悪」といいます。 ダーウィンの進化論を援用して、生物は一方向に向かって進化していくのではなく、むやみに多くの変種を生み、たまたま自然に適応した種だけが生き残るので、人類は進化でも退化でもない状態=退廃の状態に置かれる、と人間の状況を定義付けます。 「タイム・マシン」では80万年後の、労働から解放されたユートピアのような世界に住む、優雅で温和なエロイと出会い、彼らの生活に主人公は安堵します。しかし、それは地下で労働をもっぱらにする獣人モ―ロックによって支えられていることを知ります。さらに恐怖すべき発見をします。モーロックの食糧はエロイなのです。 主人公はさらに未来へと進み、もはや人類の末裔は見つかりません。 それでも、主人公は未来へと進みます。 19世紀末に戻り、主...
思想・学問

宇宙樹

地球が丸くて、しかも宇宙の片田舎にある太陽の周りをぐるぐる回っている、とする事実を突き付けられたとき、当時のヨーロッパの人々はひどく動揺したようです。 それはそうでしょう。地球は宇宙の中心にあって、地球の周りを他の星が回っていると考えていたのですから。 宇宙の中心にある星に君臨する人間は、神様に似せて作られた立派な生き物のはずでした。 それがその他大勢になってしまったわけです。 学芸会でお姫様役のつもりだったのに、どっちを向いてもお姫様で、誰も世話する役がいなかったようなものです。 かくして、地球及び人間は、自らの力で孤独に生きる運命を思い知らされました。 古代、北欧では、巨大な木が世界を構成していると考えられていました。その名称は、宇宙樹とも、世界樹とも。 下の絵が、北欧で考えられた世界です。  イスラム教にも、天上に通じる巨木に対する信仰が見られます。 わが国においても、杉の木や楠などの巨木にしめ縄を張って、ご神体としてお祀りしますね。 木だけでなく、古くはバベルの塔やピラミッド、現代ではドヴァイ・タワーや建設中の東京スカイツリーなど、人間は天上へ天上へと志向していきます。 天上に...
社会・政治

ゾディアック

DVDで「ゾディアック」を観ました。 「セブン」や「ファイト・クラブ」で暴力や狂信など、人間の暗部をえぐるテーマを題材に上質なエンターテイメントを製作してきたデヴィット・フィンチャー監督がメガホンをとったサスペンスです。 1969年から1974年にかけてサンフランシスコ周辺で起きた連続殺人事件で、犯人が警察やマスコミに暗号文を送ってきたりして、日本人には馴染みが薄いですが、アメリカでは有名な事件だそうです。 限りなく黒に近い灰色の犯人らしき人物が1991年に起訴されましたが、係争中に死亡し、死後のDNA鑑定で事件現場のDNAと一致しなかったため、現在も捜査中という実質的には迷宮入りした事件を、丹念に描いています。 実話ならではの迫力がありますが、一方エンターテイメント性に欠ける感は否めません。しかも二時間半の大作のため、途中退屈しますが、見えない犯人に踊らされて警察や新聞記者が右往左往する様は、滑稽ですらあります。 宮崎勉や酒鬼薔薇聖斗の事件などの残虐で呪術的なシリアル・キラーと比較すると、殺人の手口があっさりしていて、この事件が牧歌的にさえ思えてきます。 なんでも「ダーティー・ハリー...
お笑い

谷啓さん

谷啓さんが亡くなられました。 力の抜けた洒脱な役者でした。 本来はミュージシャンだったのでしょうが、私の記憶にある谷啓さんは、コントやドラマ、映画で粋な芝居を見せる、喜劇役者でした。 植木等やいかりや長介、渥美清や三木のり平、益田喜頓など、かつては爽やかな東京弁の喜劇人が多くいました。いずれも鬼籍に入られてしまいました。 近頃は関西弁を武器にしたやつばかりで、東京ではビートたけしが一人気を吐いていますが、そのたけしも監督業に忙しいようです。 とんねるずは内輪話ばかりで純粋な喜劇人にはみえません。何より枯れた味わいがありません。 寄席に行けば今でも多くの東京弁の喜劇人を観られますが、彼らは爆発的にブレイクすることがありません。 かつて渥美清がフランス座でストリップの合間にコントをやっていたころ、評判が評判を呼び、本来なら早く女の裸踊りを見せろ、コントひっこめ、などと野次を飛ばされるはずが、渥美清に限っては、ストリップはいいからあの四角い顔したコメディアンを見せろ、とストリッパーが野次られ、ストリップ小屋始まって以来最初で(多分)最後の、喜劇見たさに客であふれかえるという珍現象が起きたそう...
思想・学問

閨房哲学

サド侯爵の作品は、文字通りサディズムに溢れており、ときにそれは滑稽なほどですが、話の合間に、登場人物たちによる長い哲学的な会話が交わされることを特徴とします。 その特徴は、まずアンチ・キリスト、それに死後の不存在、さらに快楽至上主義、また人間の法より自然の掟、といったところでしょうか。 「閨房哲学」はサド思想を知るうえでもっとも平易な作品ですが、そこで殺人を正当化する理屈が語られます。 自然にとって、人間の命も動物や虫の命も等価値なはずで、人間が牛や豚を殺すのと殺人を犯すことは、どちらも残虐非道な犯罪か、あるいはどちらも取るに足らないことでしかない。人間は他の生物を殺害しなければならない宿命を負っており、牛や豚を殺すことは取るに足りないことだ。したがって殺人も取るに足りないことだ、というわけです。 屁理屈みたいなものではありますが、幼児に「どうして人を殺しちゃいけないの?」と問われると、なかなかうまく答えられないのではないでしょうか。  例えば絶対に捕まらないという保証があり、殺せば莫大な金が手に入る、という状況で、眠っている老い先短い老人を前に出刃包丁を持っていたとしたら、どうするで...
社会・政治

モスク

最近、グラウンド・ゼロの近くにモスクを建設する計画が米国で論議を巻き起こしていますね。 米国が守ってきた価値観によれば、犯罪集団でないかぎり、いかなる宗教団体であっても、地権者との契約に基づいて任意の場所に宗教施設を建築できるはずです。 実際、オバマ大統領はそのような発言をし、アメリカ中から非難を浴びました。 グラウンド・ゼロの近くにイスラム教のモスクって、いくらなんでも犠牲者および遺族に対する配慮が足りないんではないの?、ということのようです。     感情としては、モスク建設に反対する米国人の気持ちもわかりますが、9.11テロを計画、実行した過激思想のイスラム教徒と、ニューヨークで暮らす一般的なイスラム教徒を一緒にしてはいけません。  ほとんど信じてないけど結婚式や葬式はキリスト教式で、ごくまれに教会に行くし、たまには聖書を読もうと意気込んで挫折する、微笑ましいなんちゃってキリスト教徒と、厳格に聖書の教えを信じる原理主義者と、両極端な人々を同じようにキリスト教徒と呼んでいます。 テロリストは昔懐かしい十字軍の頃の宗教戦争に擬しているようですが、米国政府までその挑発に乗ってはあまりに...
文学

みみらく

「蜻蛉日記」に、死者と会える島、みみらくについての記述があります。 死者はみみらくに現れるのですが、現世の人がその島に近づくと消えてしまう、とも。 いずくとか 音にのみきくみみらくの しまかくれにし 人をたづねん(『蜻蛉日記』)  この伝説は京都で流行り、京の人々はそういう島があるなら行っていみたいものだ、と思いながら、そこへ向かおうとはしませんでした。 ここが、恐山の口寄せと大きく異なりますね。 人々はただ死者を想い、いつかはみみらくに行って再会を喜び合おう、と思っていたのでしょう。 しかし、近付くと消えてしまう幻の島です。 上陸は夢のまた夢です。 現在では五島列島の福江島と考えられ、かつて遣唐使船の国内最後の寄港地だったとか。 遣唐使は命がけの渡海でしたから、この港を出れば生きて帰れるかわからない、という思いが、伝説を生んだのかもしれません。 死者への追慕の念は純粋ですね。 盆になったら坊主が来るのでいくらか包まなきゃならん、ああ、面倒だ、というのが本音としか思えない現在の風習とはずいぶん違います。蜻蛉日記 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)角川書店角川グループパブリッ...
文学

重陽

今日は9月9日、重陽の節句ですね。  だからといって、菊を酒に散らせることもせず、平凡な平日にすぎません。 台風の影響か、私が住まい、働く千葉県は、急激に涼しくなりました。 今までの猛暑が嘘のような。 また暑さのぶり返しはあるでしょうが、それは夏の残照のようなもの。はかないに違いありません。 芭蕉の句に、 この道や 行く人なしに 秋の暮 というのがあります。 静かな秋の夕暮れ時の、寂しい路傍が目に浮かびます。 一方、蕪村の句で、 戸をたたく たぬきと秋を おしみけり  という、どこか滑稽味のある句が詠まれています。 四季折々を楽しむのがわが国古来のしきたりですから、秋には秋の良いものを楽しみたいものです。 秋は豊かな収穫を寿ぐ時季でもあります。 今年は秋刀魚が不漁だそうで、我が家ではまだ秋刀魚を食していません。 去年は一匹50円まで下がって、いやというほど食ったのですが、今年はまだ200円もしますね。 目黒の祭りも金がかかってしかたないでしょう。 また、秋はどこかさびしい季節でもありますね。春は春愁、秋は愁思とか言います。 人にとって過ごしやすいはずの春や秋に憂愁の情に捉われるというの...
文学

エコ源氏

エコロジーというのは近頃の流行りですね。  燃費が良い車に乗るとか、割り箸は使わないとか、そんなイメージですね。  しかし米国人の日本文学研究者が、奇妙なことを言い出しました。  エコ「源氏物語」研究が必要だそうです。 エコとはいっても、「源氏物語」で自然がどう語られているか、とか、紫式部の自然観とか、そういったことを研究するのではないそうです。 文化を考えるときに、例えば日本人は日本文化を日本独特の素晴らしいものだと考えます。 その米国人は、このような文化への態度を、文化は常に同時に宣戦布告なり、と言っています。  文化の独自性を言い立てるのではなく、文化の普遍性を見つけることが肝要、ということです。 エコロジーの問題を、国家に任せるのではなく、自我と他者に関する態度や、考え方そのものから変えていかなければならないそうです。  「源氏物語」のエコ研究ですが、「源氏物語」は総体的に支配できるような読みを拒絶する構成になっており、それをしようとするとtextual violenceとでもいうべき、暴力的な状況が生まれます。 「源氏物語」が持つ不安定さを読み取っていく作業が、個人的レベルの...
社会・政治

国策捜査?

鈴木宗男議員に対し、実刑の有罪判決がくだされ、確定しました。 以前、「なんびとといえども判決が確定するまでは白なんだ。推定無罪が日本の法律だ」と息巻いていました。それはその通りですが、有罪が確定した今、何と言うのでしょうね。 申し訳なかった、反省しています、と言うのか、冤罪だ、異議申し立てをし、それでも駄目なら再審請求する、とでも言うのでしょうか。 怒鳴ってばかりで冷静さの感じられない人だな、という印象をずっと持っています。 政治家や高級官僚が逮捕されると、決まって、国策捜査だ、と言いますね。  不思議なことです。  国策の案を練るのが高級官僚、国策を決定するのが政治家。それを検察の役人が国策なるもののために事件をでっち上げるのだとしたら、その国策とは何でしょうね。検察官が手柄欲しさにやるんでしょうか。  検察庁も法務省の機関。他の役所に比べて独立性が高いとは言っても、内閣から独立している会計検査院や人事院とは違い、法務大臣の指揮下にある行政機関に過ぎません。   厚生労働省の元局長が障害者団体に対し、違法に便宜を図った、という事件は見込み捜査によるでっちあげだったことが判明しました。...
映画

親指さがし

昨日に引き続き、和製ホラーを観ました。 「親指さがし」です。 こちらは昨日とは打って変わった力作です。 12歳の少年少女6人が親指さがし、という名のゲームをするのですが、その際一人の少女がいなくなってしまいます。主人公は少女を探す、と約束したのですが、果たせないまま成人を迎え、同窓会で残りの4人と再会します。 主人公は少女を探すため、もう一度親指さがしをしよう、と4人に持ちかけます。 しかしその後、一人、また一人と、謎の死をとげ、主人公は消えた少女の恨みと考え、奔走します。 しかし話は急展開し、物語はオカルト・ホラーからサイコ・ホラーの様相を呈し始めます。 起承転結がはっきりしていてストーリーとして面白く、映像も12歳当時の場面をたびたび挿入してノスタルジックです。 この映画は低く評価する人が多いですが、私には面白く感じられました。親指さがし スタンダード・エディション 熊澤尚人,山田悠介,まなべゆきこ,高橋泉エイベックス・マーケティング↓の評価ボタンを押してランキングをチェック!
映画

マン・ハンティング

久しぶりに観ました。 製作者の自己陶酔と思われる独りよがりなダメダメホラー。 たいした謎もなく、思わせぶりなセリフを吐かせ、無駄に血を流し、悲鳴をあげる。 そのうえこれでは受けないと思ったか、女子高生役の主人公を半裸にして客に媚びる。 唯一の救いは、一時間ちょっとと短いため、最後まで観ても疲れない。 ダメなホラーの見本を観たい方は、ぜひどうぞ。マン・ハンティング 宮島幸雄アルバトロス↓の評価ボタンを押してランキングをチェック!
社会・政治

権力とM

現在、民主党代表=総理大臣の座をめぐって、熾烈な権力闘争が繰り広げられていますね。 こんな実力者同士のガチンコ対決は久しぶりです。 2001年に小泉純一郎が橋本龍太郎を抑えて勝利して以来ではないでしょうか。 その後小泉内閣は五年の長期政権になり、やりたい放題やりつくしました。 あの異様とも思える小泉人気と、数年後にくる民主党フィーバーを見ると、世論の風は簡単に右に吹いたり左に吹いたりするのだな、と空恐ろしくなります。 小沢議員か菅総理かどちらになるかはわかりませんが、この二人のどちらかが、日本の最高権力者になります。 当然のことながら、権力者は合法的に暴力を行使する権限を持ちます。 警察官は警棒を持ち、短銃を所持していますね。 自衛隊は世界でも有数の強力な軍隊です。 陸・海・空については、次のように揶揄されているそうです。  陸上自衛隊「用意周到 動脈硬化」海上自衛隊「伝統墨守 唯我独尊」航空自衛隊「勇猛果敢 支離滅裂」 人間には権力欲というのがあって、これは他人を実力で支配することを望む、というのが本音であろうと思います。 特に男はその傾向が強く、小沢議員の立候補が決まってからの菅総...
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