ダイムストア(雑貨屋)で売られていたパルプ・ノワール(読み捨て用の安紙小説)で活躍し、死後20年を経てダイムストアのドフトエフスキーとも称されるようになった早すぎた天才作家、ジム・トンプソンの名作「おれの中の殺し屋」を映画化した「キラー・インサイド・ミー」を昨夜鑑賞しました。
評価の難しい映画ですねぇ。
はまる人はとことんはまるでしょうけど、嫌う人は徹底的に嫌うでしょう。
で、私は残酷な作品を見慣れているせいか、はまることも嫌うこともなく、冷静に見られました。
1950年代、テキサスの田舎町の保安官助手、ルー。
彼は誰からも好かれる紳士的な好青年です。
しかし少年の頃、彼は加虐的な嗜好をもっていました。
それがある時、町はずれで売春をしている若い女に町を出ていくよう警告しに行き、成り行きで関係をもってしまってから、生来の加虐的な嗜好を復活させます。
そしてルー自身にも制御不能な殺人を重ねることになります。
しかもそれは、衝動的なものとは思えない、完全犯罪を目論む用意周到なものでした。
捜査は難航し、ルーの思惑どおりにことが運ぶかに思えましたが、捜査当局は意外な証拠を手に、ルーを追い詰めていき、進退きわまった彼は破れかぶれの反攻を試みるのです。
何よりこの映画の優れている点は、ルーを演じたケイシー・アフレックの見事な演技にあります。
冷静で温厚な紳士にしか見えないのです。
それは彼が殺人を犯した後も変わりません。
ルーを取り調べた郡検事はそんな彼の様子を見て、「まるで何の問題もないとでも言いたげな態度だな」とため息をつきます。
そして娼婦の魅力的なこと。
テキサスの荒涼とした風景を背景に、米国版横溝正史とでもいった因習的な田舎での連続殺人が戦慄を呼びましたねぇ。
この映画はお勧めもけなすこともしません。
ご自分の目で確かめてみてください。
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