氷の轍

ブログ文学


 今日は夏休みの最終日。
 心が沈みます。
 この休みは二泊三日で那須高原に行く予定でしたが、同居人のコロナ発症で断念。
 一人で映画館に2回出かけた以外は家でおとなしく読書をしてすごしました。
 今日は桜木紫乃のミステリー「氷の轍」を読みました。
 50年に及ぶ母親、母親を慕う男、母親に売られた二人の娘の物語が雄大に語られます。

 作中、折々に北原白秋の短い詩が挿入されます。
 他ト我という詩です。
 二人デ居タレドマダ淋シ
 一人にナッタラナホ淋シ
 シンジツ二人ハ遣瀬無シ
 シンジツ 一人ハ堪ヘガタシ


 この小説は、人と人との遣る瀬無い関係性を切り取って見せます。
 遣る瀬無い事情で殺人事件が発生し、遣る瀬無い事情で互いに知らなかった50年が語られます。
 知らずに済めば良かったのにと思わせます。
 この作者、いわゆるミステリー作家ではありませんが、優れた筆力で読ませてしまうあたり、脱帽です。

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