文学 艶書
メールだのSNSだのといった手段が発達してきましたが、恋の告白をするのに、昔懐かしい恋文という手段は、廃れてしまったのでしょうか? 愛だの恋だのといった艶っぽい話を失って久しい私には、近頃の事情が分かりません。 しかし少なくとも、私が若い時分には、まだ恋文は、重要な告白の手段であったように思います。 古語では、艶書(えんしょ又はえんじょ)とも呼んだ恋文。 ラブレターと言ったほうが通りが良いかもしれませんね。 わが国の浪漫文学の奇才、泉鏡花の掌編に、「艶書」という小説があります。艶書泉 鏡花メーカー情報なし 泉鏡花らしい、流麗な文体と、テンポの良い会話が特徴の、幻想的な作品です。 ある病院に夫の見舞いに行くご婦人。 その美しさに見惚れたお見舞い帰りの男が声をかけます。 病院の近くに狂人がいて、むやみに石を投げる、と警告するのです。 ここから、男女の間に不思議な会話が交わされます。 男がある人妻からの艶書を紛失し、困っていたところ、ご婦人がそれを拾ったというのです。 中身を見たかどうかを気にする男。 女は最初しらばっくれていますが、ほどなくして涼しい顔で「拝見しましたよ」と応えます。 それ...