最近、身近にいる同世代と、疲れやすくなったとか、物忘れが始まったとか、あるいはもっとはっきりと、健康診断でひっかかって治療を受け始めたという話をするようになりました。
40代になると、どこかガタがでるのでしょうね。
お相撲さんも野球選手も、40歳で現役という人は稀ですし。
人間80年だとすれば、ちょうど折り返しですね。
体の不調だけではなく、若い頃思い描いていた将来像に近づけたか、到底無理か、という人生設計みたいなものを見直す必要に迫られてきます。
無限の可能性があるかに思われた自分の未来が有限であることに嫌でも気付かされます。
そしてその先にある死というものを、なんとなく意識するようにもなりましょう。
現代の日本人は、衣食住に困っている人は少数だと思います。
もちろんホームレスという人々もいますが、社会資源を上手に使えば、食うにも寝るにも困るということはあまりないのではないでしょうか。
衣食住が足りると、次に何を求めるかといえば、心理学者のマズローが広めた自己実現という概念でしょうね。
仕事をばりばり頑張って社長を目指すのが自己実現だという人もいれば、趣味の盆栽に没頭するのが自己実現だという人もいるでしょう。
自己実現というのは自分一人が満足すれば良いので、傍から見たらくだらないことでもかまわないわけです。
いつだったかテレビで、縄文人の暮らしをしている、という夢追い人を取材した映像を見ました。
縄文人ぽい格好をして、ひげをはやし、竪穴式住居に住んでいます。
しかしじつは竪穴式住居は自宅の庭にあり、自宅は近代的な一戸建てで、電気水道などのインフラは完備されています。
実際には自宅のベッドで寝て、奥さんが作る食事を食べながら、時折縄文人の格好をして、竪穴式住居でひと時を過ごすのです。
しかも竪穴式住居には冷蔵庫があり、ビールが収められていました。
いいですねぇ。
なんちゃって縄文人。
こういう自分に甘い夢を追うのは最高に幸せでしょう。
さて、私はといえば、精神病を患ってから仕事中心の生活は考えられなくなりました。
給料をもらえればそれでよし。
命じられた仕事を淡々とこなすばかりです。
当然、仕事で自己実現を図ろうとは露ほども思いません。
一時期小説の執筆に熱心でしたが、近頃では躁転の危険もあり、面倒くさくもあり。
これから後半生の設計を考えなければなりませんね。
それにしても毎日毎日飯を食い、糞をたれては風呂に入って眠る、その基本でさえ面倒くさいのに、仕事をしたり趣味を持ったり、人間というのはどこまでも欲深ですね。
私もその欲深な人間の一員。
私の果てしない欲望がどこへ向かうのか、後半生の設計は難しそうです。
![]() | 完全なる人間―魂のめざすもの |
Abraham H. Maslow,上田 吉一 | |
誠信書房 |
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フランク・コーブル | |
産能大出版部 |