光トポグラフィー:精神科の新しい検査

精神障害

 最近、精神病の診断に、光トポグラフィー検査というのが使われるようになったことを知りました。
 従来、統合失調症であれ、うつ病であれ、双極性障害(躁うつ病)であれ、医師の問診によることが多く、内臓の病気のように血液検査などの客観的な数値を見ることはありませんでした。
 これが客観的に数値化できるとなると、早期発見にもつながるし、誤診を防ぐことも可能かと思います。

 大脳を使ったときに脳の血液量がどのように変化するかを近赤外光を頭部にあてて観察するそうです。
 例えば、「い」で始まる言葉を思いつくまま言ってください、と患者に命じます。
 「い」で始まる単語を考えると、大脳が活発に働きます。
 すると、通常、以下のような血流が見られるそうです。

 ●健常者:課題が始まると大脳がすぐに反応して血液量が急増。課題に答えている間中、血液量は高いレベルを維持する。
 
●うつ病:すぐに反応するものの、血液量はあまり増えない。
 ●躁うつ病:課題が始まってからも血液量がなかなか増えない。
 ●統合失調症:血液量が十分に増えない、増加、減少のタイミングが良くない。

 東京大学医学部附属病院ではこの検査を今年の2月から開始し、うつ病と診断され治っては再発を繰り返していた患者の検査結果が、躁うつ病を示し、治ったと診断されたのは軽躁であったと診断が改められ、躁を抑える薬が処方されたら著しく回復したそうです。

 私も最初はうつ病と診断され、3年もたってから躁エピソードが現れ、双極性障害(躁うつ病)に診断が変わりました。
 最初にうつ状態になって病院に行けば医者は当然うつ病を疑うはずで、躁エピソードが現れるまでは時間がありますから、その間は誤った治療を受けていることになります。
 ところが初診時に光トポグラフィー検査を行っていれば、こういった誤診を防げる可能性があります。

 私は毎日の服薬と隔週の診察で症状が安定していますが、今後発病する患者には朗報なのではないでしょうか。
 
 また、健常者と明らかに脳の血液量と波形が異なるということであれば、それは脳の機能障害であることの証明であり、怠けているとか、気の迷いだとか、体を動かせば良くなるとか、薬なんかより酒のほうが効くとか、様々な偏見や差別を減らすことができるように思います。

 もちろんこの検査は絶対的なものではありませんが、それでも精神科の領域に数値化できる客観的データを計ることができる方法が導入されたのは、喜ばしいことと考えます。
 うつ病による自殺者を減少させることができれば、死病の克服とも言えるのではないでしょうか。

精神疾患とNIRS―光トポグラフィー検査による脳機能イメージング
福田 正人
中山書店


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