ぼくのエリ

映画

 朝っぱらから幻想的で美しい映画を観ました。
 「ぼくのエリ」です。

 スウェーデンはストックホルムのアパートに母親とくらす12歳の少年、オスカー。
 彼はいじめられっ子で怖ろしい殺人事件の新聞記事をスクラップにすることが趣味の孤独な少年です。
 ある時、隣に初老の男と少女が引っ越してきます。
 アパートの中庭に夜出ると、少女が薄着でたたずんでいます。
 ぎこちなく挨拶を交わし、その後毎夜のようにオスカーと少女エリは逢瀬を重ねていきます。
 ここまではスウェーデン版「小さな恋のメロディ」といったところ。

 しかし町では不可解な殺人事件が頻発するようになり、エリは永遠に12歳の少女のまま町から町へと渡りあるいて生きる吸血鬼だと、オスカーは気付きます。
 それでも互いに恋情を抱きあい、遠からず訪れるであろうエリの移動の日を怖れます。

 日の光を浴びると焼け死んじゃうとか、招待の言葉を聴かなければ他人の家に入れないとか、吸血鬼の属性は一般的なそれと変わりません。
 エリに使える初老の男、素性は明かされませんが、エリが犯罪を犯さなくてすむように、夜な夜な殺人を犯しては血液を抜き取ってエリの元に届けています。

 冬のストックホルムは寒々しく、一面雪で真っ白です。
 孤独な少年と少女が密かに逢瀬を重ねるには、ぴったりな舞台装置です。

 ただ難を言えば、この小さな恋を美しく可愛らしいものとしてばかり描いていることです。
 12歳といえば早い子なら色気づく頃。
 学校では幼い派閥抗争や小さな権謀術数が渦巻き、無邪気に見えるのは大人の偏見に過ぎません。
 そんなことは自分が12歳だった頃のことを思い出してみれば、明らかでしょう。
 12歳の少年は狡猾で冷酷、暴力への嗜好を隠し、突然身に降りかかってきた性欲に悩まされてもいるでしょう。

 そこらへんは、コクトーの名作「恐るべき子供たち」に詳しく、格調高く描かれていますね。

 映像の美しさ、BGMの静かさ、始めから叶うはずがない悲恋、これらが格調高く描き出された結果、この映画は60を超える賞を受賞したそうです。

 吸血鬼と人との恋を描いた映画に、新しい地平がもたらされたようです。

ぼくのエリ 200歳の少女 [DVD]
カーレ・ヘーデブラント,リーナ・レアンデション
アミューズソフトエンタテインメント
恐るべき子供たち (岩波文庫)
鈴木 力衛
岩波書店
小さな恋のメロディ [DVD]
アラン・パーカー,アラン・パーカー
ポニーキャニオン

人気ブログランキングへ

↓の評価ボタンを押してランキングをチェック!
素晴らしいすごいとても良い良い