甦れ、ハルキ社長

文学

 私はかつて、角川春樹社長畏敬の念を持っていました。

 硬い出版社だった角川書店を、映画とエンターテイメント小説で巨大商業書店へと転換させ、俳人としても飛ぶ鳥落とす勢い。
 横溝正史のシリーズ物や、薬師丸裕子・原田知世・渡辺典子ら、いわゆる角川三姉妹を大々的に売り出したり。

 そうかと思うとヒトラーの信奉者を公言し、世界最強の人間を自称し、さらにはおのれを芭蕉を越えた俳人と呼んで恥じない図々しさ。

 そういう芸術家っぽいぶっ飛んだ所と、映画や本でヒットを飛ばす商人としての能力が共存している点がおもしろいと思うのです。

 
向日葵や 信長の首 切り落とす  「信長の首」より

 黒き蝶 ゴッホの耳を 殺ぎにくる  「カエサルの地」より

 流されて たましひ鳥と なり帰る  「流され王」より

 いずれもかつて私が熱狂した角川春樹社長の句です。
 男らしい言い切り系の、力強くも幻想的な句風を特徴とします。 

 しかし1993年に麻薬取締法違反で逮捕され、数年間の実刑をくらってから、社長にはかつての、おのれ一人を恃むような、力強さが失せてしまったように思います。

 出所後も、「男たちの大和」を大ヒットさせたり、新たにハルキ文庫を創刊したり、また、句集を出したり、再び活躍しているはずなのですが、どこか、イッチャッテル迫力がないのです。
 例えば、信長が前非を悔い、出家して寺に籠ったりしたら、今これほど多くの信長ファンはいないでしょう。

 荒俣宏長淵剛中上憲次岡野弘彦、多くの文化人と交友を持ち、その誰からも尊敬された角川社長
 
 今もその傲慢なまでの魅力を保っているのでしょうか。

 たかが投獄されたくらいで去勢されたようになるのなら、今までのはハッタリか、たわ言としか思えません。

 角川社長、お年もそろそろ70歳に近いはず。
 ここらでまた、おバカをかましてくれませんか。
 内田裕也なんかに負けてちゃいけませんよ。

わが闘争―不良青年は世界を目指す
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