牧水先生

文学

 今年の夏は各地で花火大会や祭りが中止になり、なんとなく寂しいですね。
 もっとも、人ごみが苦手な私は、花火やお祭りの賑わいは苦痛でしかありませんが。
 中止の理由は震災の影響なんでしょうねぇ。
 やむを得ざる仕儀というわけです。

 野末なる 三島の町の あげ花火 月夜のそらに 散りて消ゆなり

 若山牧水が珍しく詠んだ、花火の歌です。 
 どうということもない歌ですが、なぜか、閑散とした花火会場の景が浮かびます。
 もっともそれは、隅田川や江戸川やの、混雑激しい花火会場と比較して、という意味ですが。

 
北南 あけはなたれし わが離室(はなれ)に ひとり籠れば 木草(きぐさ)見ゆなり

 こちらは暑さに参って風通しの良い離れでのんびり横になっている風情でしょうか。
 今でいえば、休暇をとって冷房を効かせた部屋から一歩も出ずに日を過ごす怠け者の喜びといったところでしょう。
 
 
なまけつつ こころ苦しき わが肌の 汗吹きからす 夏の日の風

 牧水先生、のんびり夏の日を部屋にこもって酒でも喰らっているのかと思ったら、人並みに罪悪感なんか感じちゃってるんですねぇ。
 だらだら過ごすことに罪悪感を感じるのは、わが国の国民性でしょうか。
 それとも万国共通なんでしょうか。

 夜爲事(よしごと
)の あとの机に 置きて酌ぐ ウヰスキイのコプに 蚊を入るなかれ

 ようやっと呑み始めましたね。
 牧水先生はこうでなくっちゃいけません。
 いつだって酔っぱらって、とろんとした目で見事な歌を物すのが、先生の素晴らしいところです。

 昭和3年、先生は43歳の若さで亡くなりましたね。
 多分毎日の大酒がたたり、酒毒が全身を回ったんでしょう。
 先生らしい死にざまですね。
 私はあと一年で先生が亡くなった年に追い付きます。
 でもだからって、勘違いをしては困りますよ。
 私はまだまだ長生きするつもりなんですから。

若山牧水歌集 (岩波文庫)
伊藤 一彦
岩波書店

 

いざ行かむ、まだ見ぬ山へ―若山牧水の歌と人生
伊藤 一彦
鉱脈社
若山牧水 さびし かなし
田村 志津枝
晶文社

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