午後は近所のシネコンに出かけ、話題のサイコ・サスペンスにして家族愛のドラマでもある佳品、「イノセント・ガーデン」を鑑賞しました。
これはなかなか上質で気品あふれるサスペンスで、雰囲気は抜群でしたが、ストーリーはやや平凡な感じがしました。
また、原題が「Stoker」なのになんで邦題を横文字の「イノセント・ガーデン」にしたのか不明です。
もっとも、これを例えば「無垢な庭園」とでもして、完全な日本語訳のタイトルとすれば、あるいは原題よりも趣き深いものになったかもしれません。
まずは予告編をどうぞ。
静かな森の中の豪邸で暮らすインディアと両親、それに家政婦。
インディアの18才の誕生日に、父親は謎の事故死を遂げます。
学校一の優等生であるインディアですが、彼女は大のパパっ子で、ニコール・キッドマン演じる母親とはそりが合いません。
インディアは幼い頃から父親に連れられて何度も森でスポーツ・ハンティングを楽しんでおり、母親は娘に嫉妬している風でもあります。
父の死後、世界を旅する風来坊という設定の父の弟がやってきて、しばし滞在することに。
この叔父には秘密があり、それを受け継ぐ者はインディアであるに違いないと確信し、叔父はインディアを誘惑します。
叔父が世界を放浪していたというのは建前のことで、子どもの頃からの残虐さゆえ、精神病院に入院していたのです。
そしてインディアにも同じ残虐性があり、そのことに勘付いた父親は、それを発散させ、大事にいたることが無いようにするため、さかんにスポーツ・ハンティングに連れ出していたのです。
叔父と初めての殺人を犯した晩、インディアは熱いシャワーを浴びながら自慰に耽り、絶頂に達します。
また、まだおのれの真なる欲求に気付く前、同じ獣の血が流れる叔父とピアノを連弾しているさなかにもエクスタシーに達するシーンがあり、それはぞっとするほど美しく、私はただ、銀幕を見つめながら口を空けているだけでした。
生まれながらの殺人鬼を描いた作品としては、その物ずばりのタイトルを冠した「ナチュラル・ボーン・キラーズ」のように社会的問題が描かれているわけでもなく、「羊たちの沈黙」シリーズや「SAW」シリーズのような魔術的思考を持ったマッド・サイエンティストが出てきて頓知を仕掛けるわけでもなく、とてつもなく冷酷な殺し屋を描いて背筋も凍る寒々しさが強烈な「ノーカントリー」のような金のためならなんでもやる非情な男を描いているわけでもありません。
ストーリー自体に新鮮さが無いにも関わらず、「イノセント・ガーデン」が印象深いのは、ひとえに映像美が強烈だからかと思われます。
それはまるで、「眺めのいい部屋」や「モーリス」などの文芸大作で名高いジェイムズ・アイヴォリー監督の作品を観ているかのような錯覚に陥るほどです。
恐怖と美、あるいは狂気と美というものは極めて相性が良いものだということを、再認識させられた一作です。
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