昨夜は生田斗真が感情の無い、しかし正義のためと信じて殺人を続ける殺人鬼を演じた「脳男」を鑑賞しました。
なかなか考えさせられるバイオレンス・サスペンスでした。
謎の連続爆発事件が発生します。
警察は鈴木一郎を名乗る男を逮捕しますが、どうも言動が奇妙です。
で、精神鑑定に。
精神科医は、調べれば調べるほど彼がこれまでの殺人犯と全く異なるタイプであることが判明します。
まず、痛みを感じないらしいこと。
それに、質問には簡潔に答えるが、自分の意見や感情を決して表に出さないこと。
調べるうち、幼い頃両親を交通事故で亡くし、大金持ちの祖父に育てられたことが判明。
祖父は体育教師や精神科医を何人も雇い、英才教育を施しますが、愛する息子夫婦を事故で失い、しかも犯人が見つからないことから、ゆがんだ教育を施し始めます。
食事や排泄ですら命じられないと出来ない子どもでしたが、異常な記憶力と体力を持ち、一種の天才であった孫に、警察や裁判所が裁きを下せない事件をみつけたら、犯人を殺害せよ、と教え込むのです。
そして彼は、彼なりの正義を実現するために、殺人鬼となるのです。
警察は鈴木一郎が連続爆弾事件の犯人では無いことに気付きます。
むしろ鈴木一郎は、爆弾魔に正義の鉄槌を下すつもりだったのです。
爆弾魔は、末期がんに冒された少女。
彼女は鈴木一郎と違い、生まれついての快楽殺人者です。
彼女を神と崇める少女と同性愛関係でもあり主従関係でもある奇妙な関係性のなか、2人で殺人を繰り返し、ついには鈴木一郎は殺人鬼としての魂を持たないまま殺人に手を染めていると直感し、鈴木一郎の魂を救済すべく、彼を殺害せしめようと決意します。
爆弾魔の少女は周到な仕掛けをして鈴木一郎が入院している大きな病院を占拠。
あちこちで小型の爆弾を爆発させて警察を牽制しつつ、鈴木一郎の精神鑑定に当たっている女医を人質に、鈴木一郎が自分を殺しに来るのを待ちます。
快楽殺人鬼と正義の殺人鬼の対決です。
しかも2人とも、抜群に頭が良く、抜かりが無いのです。
このメインの物語を軸に、息子を亡くしたことから重度のうつ病を患う女医の母親や、女医が更生させた快楽殺人鬼の少年の事などのサブ・ストーリーが描かれ、物語は重層的な厚みをもって、圧倒的迫力で観る者に迫ってきます。
難を言えば、脳男とあだ名される主人公の人物造形が、やや浅はかに感じられること。
むしろ末期がんの快楽殺人鬼の少女に感情移入しやすくできています。
もっともそれが、脳男の脳男たる所以なのかもしれません。
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