魔境

精神障害

 5月も今日で終わり。
 これから梅雨に入るんですねぇ。
 嫌な季節です。

 仕事は今の部署が2年目に入り、多少慣れてきたといったところで、とくだん落ち込むことはありません。

 それだけでも、ずいぶん楽です。

 仕事は山積みで、ちょっと前だったらひどく落ちたのでしょうが、なんだかどうでも良くなったというか、図々しくなったというか、良い意味でも悪い意味でも鈍感になった感じがします。

 鈍感ということがこれほど楽だとは最近まで思いませんでした。
 何事も常に完璧を求め、だからこそ悩み、落ち込んだのでしょうが、最初から完璧なんて不可能で、7割方できれば上々だと知れば、精神衛生上極めて有益だということに気付きました。

 そんなことは多くの医師、カウンセラーなどから何度も言われてきたことだったのですが、そんな境地になることは自分には無理だと思っていました。
 
 持って生まれた性質というものがありますから。

 それが、近頃の鈍感。

 薬を増やしたわけでもなし、怪しげな民間療法に頼ったり、変な宗教に入信したわけでもありません。

 まさか躁転?

 そうだとしたら、もっと激しい症状が出ます。

 徹夜で駄文を書き散らす、深夜もしくは明け方に1時間も2時間も歩き回る、用もないのに車を遠くまで走らせる、無駄遣いが激しくなる、怒りっぽくなる、などなど。

 そういった症状は出ておらず、単に気の持ち様が穏やかになった気がします。
 これらはつい最近、突如として得られた境地で、自分でも不思議なのですが、それを楽しんでもいます。

 もしかしたら束の間の魔境に陥っただけかもしれません。

 魔境とは、魔物や化け物が住む恐ろしい世界、といった意味もありますが、仏教では主に、禅坊主が修行の最中に一種の神秘体験をし、もって己は悟ったと勘違いする、間違った境地のことで、これに陥る禅坊主はけっこう多いと聞きます。

 修行を積んでなお魔境に陥るのであれば、精神障害者が時折気分が良くなって、それを持って病気が治ったと錯覚するのは、やむを得ない仕儀だと申せましょう。

 仮に魔境に落ちたのだとしても、束の間の平穏を楽しみたいと、切に願います。