三日間の幸福

文学


 昨夜は三秋縋という作家の「三日間の幸福」を読みました。
 この人の小説を読むのは「君の話」に続いて2冊目です。
 貧乏学生が寿命・時間・健康を買い取ってくれる店があると聞き、三か月だけ残して寿命を売ってしまいます。
 もはや自棄を起こしたとしか思えません
 しかもわずか30万円(その後、じつは30円だったことが明らかになります)。
 さしたる能力も実績も無い貧乏学生など、そんなものなのかもしれません。
 ただしこの主人公、小学生時代は神童のごとく成績が良かったという設定になっています。
 10で神童15で天才二十歳過ぎればただの人、と言ったのは誰でしたか。
 あまたある狭い学校の中でいかに成績が良くても井の中の蛙ということでしょう。

 寿命を売った人間には、最後の3日間を除き、監視役がつくことになっています。
 反社会的行動に出たならただちに殺害するためです。
 監視役は寿命を売った本人以外には見えないことになっています。
 主人公に付いた監視役は二十歳くらいの憂いを帯びた美女で、二人は仲良くなっていきます。

 主人公には10歳で転校していった幼馴染の少女がいて、互いに二十歳になっても独身だったら結婚しようという幼い約束を交わしています。
 それが主人公には心の支えになっています。
 寿命が定まったところで幼馴染に会いに行くのですが、散々な結果に終わります。

 密かに心を寄せるようになった主人公と監視人。

 彼女は母親が時間を売りながら、その時間が来るはるか前に亡くなってしまい、借金を返すために監視人をやっていると主人公に打ち明けます。
 残り2週間で彼女の借金を返そうと奔走しますが、そんなことは夢のまた夢です。
 
 残り三日となった時、監視人は晴れ晴れとした顔で主人公に抱きつきます。
 借金返済のため、三日だけ残して寿命を売ったのです。

 幸福な、しかしあまりにも短い三日間を得た二人。
 二人は何をして過ごすのでしょうね。

 軽い読み口ながら、じつは心に残る、重く切ない物語でした。